マイナンバーに思うこと

2022/7/27作成

マイナンバーについて私的まとめに追記しようかと思ったんですが、テーマ的に少しずれるかなと思うので記事を分けます。マイナンバーについて個人的に思うことの整理です。

まず大前提として、私自身は国民番号制には賛成なんですよ。むしろ、それを導入しないでどうやって21世紀の行政事務を行うのかって話であって。私は職業がITエンジニアなんですが、ほぼどんなシステムでもマスターデータにはIDを振って、そのIDでデータを管理します。行政事務というのは国民一人一人に対してサービスを行うわけですが、そこでマスターコードが無くて、サービスごとに個別に個人登録を行ってるって、どんな地獄ですかって思うわけですよ。そんなシステムを設計したら間違いなくレビューではねられます。ということでマイナンバーの導入には賛成。

反対派の方は、国家による国民の監視やプライバシーの漏洩を心配するわけですよね。でもそれって事実上意味がない。そもそも行政サービスでは国民一人一人のデータを既に個別に持ってるわけですから。マイナンバーによって新たに収集されたり名寄せされたデータは漏洩のリスクがあるのは分かりますけどね。健康保険の請求情報が蓄積されたら個人の病歴が漏れてしまうってのは、まあリスクとしてあります。でもだからって今後も紙で保険請求業務をやりなさいってのも大概な話ですし、マイナンバー以前でも保険組合の業務は大半が電子化されてますから、名前と生年月日で名寄せすれば同等の情報を得ることはできる状態でした。

つまり、国家による監視と言ったところで、現状では既に国家が持っている情報を名寄せするだけでしかないわけです。資産がと言ったって、毎年の収入は確定申告などで把握されていますし、不動産は登記されています。今把握されてないのは単に名寄せ出来てないからでして、まさにその名寄せを行うためにマイナンバーがあるんですね。脱税できなくなるじゃないかと言われましても、気持ちはわからんでもないですが脱税は犯罪ですから。

名寄せされることと一か所に集積されることで、漏洩した場合のリスクが増大するというのはその通りです。ただ、だからって名寄せしないってのは果たして合理的な判断なのか。名寄せしないことで発生する膨大なロスを許容するのか、漏洩のリスクを許容するのか。そのトレードオフだと思うんですね。

国家による監視という意味では、個人的には資産の監視よりは思想信条の監視の方がよっぽど怖いです。なので、図書館の貸し出し履歴を民間業者にデータとして販売なんてとんでもないと思うんですが、そっちは民間活力の利用としてむしろ歓迎されてたりする。うわーいと思ったりもするんですが。

ということで基本的にマイナンバー肯定論者の私なんですが、今のマイナンバーの全てを絶賛しているかというとそんなことはありませんでして。これどうなのよと思う点もあります。

最大の問題点は、マイナンバー自体を非公開情報扱いとしてしまったこと。国家や行政など特定の場合のみにしかマイナンバーを収集してはいけないってのは、ジョークかなと思います。なんで本名や住所や電話番号は他人に伝えても良くて、マイナンバーだけはダメってのは個人情報保護の整合性が取れてないんじゃないでしょうか。マイナンバーは名寄せの精度が高いから他の個人情報よりも高い秘匿性が求められるというのも一理あるとは思いますが、この秘匿性のためによってマイナンバーの使い勝手が悪くなり、いつまで経っても普及しないという原因になっていると思うんですね。

なんならレンタルビデオ屋の会員登録時にだってマイナンバーを利用させればいいんですよ。そうすればレンタルビデオ屋はブラックリストに載ってる人が再登録することを精度高く弾くことが出来るようになりますよね。個人的にはそれでいいと思いますよ。なんらかの失地回復手段が用意されていれば。

(2023/7/5追記)

OECDの勧告にも書いてありますね。デジタルアイデンティティについてではありますが。使いたくない或いは使えない人は使わなくて済むようにして、必須サービスの利用においてそれによる不便を被らなようにしなければいけないと。 https://t.co/SdU4pD19QV

— Nat Sakimura/崎村夏彦 (@_nat) July 4, 2023

ああそうか。その視点を忘れてました。使いたくない自由を行使できる余地は残しておいて欲しい。私も過去に蒸発とマイナンバーというのを書いていましたね。マイナンバーで行政のDXが進み効率的に処理できるようになることは歓迎する一方で、不便であってもその隙間も残っていると良いのではないかということですね。