iBooksに企画出版によくある自伝みたいな本と情報商材がいっぱい並んでいる近未来を想像してしまった
— 加野瀬未友 (@kanose) 2010年2月1日
電子書籍に一番メリットを見出すのは、情報商材の人たちかもしれないな…。制作コストは下がるし、今までより価格が下がりました!とか言いながら、利益率は向上させられるだろうし
— 加野瀬未友 (@kanose) 2010年2月1日
誰かも言っていたけど、電子出版って企画出版的な業者が群がりそうだな…。「今まで本を出すのに200万円かかってましたが、なんと30万円で出せます!」みたいな
— 加野瀬未友 (@kanose) 2010年2月1日
あと、営業の話も忘れられているか。著者自身が発行者の場合、著者自身が営業かけないといけない訳で、営業力のない著者の書籍は売れない。電子書籍になって、著者自身が発行元になれば本が売れるのなら、企画出版の本はもっと売れてるはず!
— 加野瀬未友 (@kanose) 2010年2月1日
テンプレートでもいいからたくさん電子書籍が出れば、一部が売れてあと大半は死屍累々でもいいと思っている人と、作り込まないと売れるものできないよと思っている人の闘争になるのかなー
— 加野瀬未友 (@kanose) 2010年2月1日
電子出版話は、著者一人いれば本ができるぐらいの勢いで話す人が多いけど、図版の手配や校正、誌面デザインや装丁とか、著者原稿のあとの行程の重要さがあまり理解されてない感じ。まあ、新書とか学術書みたいなそういう作り込みが少ない本みたいなのを想定しているのかもしれないけど
— 加野瀬未友 (@kanose) 2010年2月1日
なるほど。加野瀬さんが危惧しているのは、出版の敷居が下がることによって低レベルな書籍が出回り、良い書籍が駆逐されてしまうという理解でよいでしょうか。現状は出版にコストが掛かることによって品質が確保されているのに対して、電子書籍化でコスト減になると全体の品質が下がってしまうと。その視点は考えていませんでしたし、確かにあり得る未来なので考察する必要はありそうです。
まず考えられる未来を整理してみたいと思います。電子書籍市場について、22世紀とか23世紀とかのはるか未来になると全部電子化(もしくは更に先)されているでしょうが、せいぜいこれから数十年程度の未来においては、
1.電子書籍市場は立ち上がるがニッチの域を出ず、従来どおりの紙の出版がメイン
2.電子書籍もそれなりに存在し、一方で紙の書籍もそれなりに存在する、共存状態
3.電子書籍がメインストリームとなり、紙の書籍はニッチに追いやられる
の三パターンが考えられます。どれになるかというのは分からないわけですが、1ならば出版の品質は従来どおり保たれそうですね(紙の出版の品質低下はこの場合の議論の対象外)。問題は2または3の場合でしょうか。
電子書籍が普及した場合にどういう現象が起こるか。先行している他の業界の状況が参考になるように思います。先行しているのでまず思いつくのは音楽業界でしょうか。楽曲のダウンロード販売は既に一定のシェアを占め、CDと半々くらいになってきているそうです。では音楽業界に粗製濫造による品質の低下は起こっているのでしょうか?
私は実はダウンロード販売を全然使ったことがないのですが、おぼろげには、基本的にCDとして制作された楽曲がダウンロード市場に提供されていると理解しています。ダウンロード専用の低コスト楽曲市場も無くは無いようですが、非常に小さな市場ではないかと思います。
音楽業界が基本的にCD制作をベースにしているとすると、制作体制はダウンロード販売以前と変わらないわけですから、制作の仕組みとして品質は下がっていないと思われます。(実際の楽曲の品質が下がっているかどうかは議論の対象外)
書籍の場合についても、紙の書籍がまず作られて、その電子版が併売されるという体制であれば、電子出版がある程度普及しても品質の激しい低下は起こらないと思われます。
他の先行事例として気になるのは映像業界です。従来は映画やテレビが主体でしたが、現在はYoutubeやニコニコ動画などの動画サイトがあります。映像制作の機材の低コスト化のおかげで、素人が趣味レベルでも映像を簡単に作成できるようになり、動画サイトのおかげで発表する場も出来ました。これで、今まで埋もれていた才能が発掘されるようになれば万々歳で、そういう事例も無いことはないのですが、やはり基本は低品質動画が粗製濫造される結果に終わっているのではないかと思います。
ちょっと話を挟みますが、私はYoutubeとかの動画サイトのどこが面白いのか全然分からない人なんです。動画を次々と検索して何時間も観続けてしまうというのが理解出来ません。割れモノならともかく、素人が作った低レベルな映像を何時間も見続けたいと私は思わないのです。でも、世間ではそういう映像を観たいという人も相当数存在するわけですから、それが未来の姿なんでしょうね。
動画サイトに投稿される映像は低コストに作られていることにも起因しますが、低品質なものが多数あります。現状はまだテレビや映画と動画サイトが住み分けているため競合は起こっていませんが、テレビにYoutube機能が付くようになるなど、徐々に競合は始まっているようです。競合するようになったとき、果たして映画やテレビは生き残っていけるのか。それとも動画サイトに飲み込まれてしまうのか。人々は、お金が掛かっても高品質なコンテンツを楽しみたいと思うのか。それとも、お金は払いたくないので、低品質なもので満足するのか。
私も一応コンテンツ業界の端っこで生きている人間なので、出来ればコンテンツ制作にお金が十分まわる状態が維持できるといいなぁと思います。それは別に自分の既得権益を守りたいというわけではなく、単純にいい物が作りたいからです。いい物が低コストで作れるようになれば一番いい未来。次にいいのが、いい物がお金が掛かっても作れる未来。一番悪いのは、お金が掛けられなくて悪い物しか作れない未来でしょうか。
(追記)
続きのエントリーを書きました。よろしければ、こちらもご覧下さい。技術が大衆化されるとレベルダウンする