新しいiPadが発売され、手に入れた人の評判がネットのあちこちで聞こえてくるようになりました。このモデルの特徴はなんと言ってもRetinaディスプレイなわけでして、それを誉める声も多くあるようです。
で、そんな中で面白いなと思ったのが、Retinaディスプレイをきっかけに自炊のやり直しをする人が現れたという話です。実話かどうかはわかりませんが、あってもおかしくないかもしれません。
普段あまり意識をしていませんが、紙に印刷された媒体というのは実は結構高解像度です。プリンタだって1000dpiを軽く上回っています。それに対してコンピュータのディスプレイというのはせいぜい100dpi程度と、まさに桁が違ったわけです。従来のコンピュータのディスプレイの解像度に合わせて自炊していた人が、Retinaディスプレイで表示させると粗が見えるようになり、改めて高解像度で自炊しなおしているというのは、確かにありえる話かもしれません。
ここでですね、タイトルに書いたようにRetinaディスプレイが自炊を駆逐する可能性がもしかしたらあるのではないかと思いました。もちろん、そうなるかどうかはわかりませんが。自炊を駆逐する可能性というのは、つまりこういうことです。
先ほども書きましたが、紙の印刷物の解像度は非常に高いです。スキャナを用いればそれをデジタルデータ化することができるわけですが、この時に完全に紙の印刷状態を取り込めるわけではありません。多少ですが、スキャンによる劣化が起こります。従来はコンピュータのディスプレイの解像度が低かったために、この劣化は特に気になるものではありませんでした。しかし、高解像度ディスプレイであるRetinaディスプレイの登場によって、この劣化が気になるようになるかもしれません。改めて高解像度でスキャンしなおすことによって、劣化が気にならなくなるならそれでいいのですが、どうあがいても気になるかもしれません。そもそも、今時アナログな版下など存在しないのですから、紙の書籍だってデジタルデータで制作されています。それを印刷したものをスキャンして再度デジタル化するというのは、まさに余計な手間が掛かっているわけです。それに加えて、スキャンによる劣化が存在します。それなら、自炊ではなく、販売されている電子書籍に移行するという人がいてもおかしくないのではないでしょうか。
もう一つ、自炊する人は大抵はスキャンし終わった書籍は処分しています。まさか裁断した書籍を再スキャンに備えて全て保存しているという人は、いてもおかしくないですが少数派でしょう。で、自炊したあとに処分してしまったわけですが、高解像度で自炊しなおしたいからといって、また全て書籍を買いなおすでしょうか?もう1回だけで終わりというのならありえるかもしれませんが、ディスプレイの高解像度化はこれから何度も起こるかもしれません。そのたびに、何度も書籍を買いなおして自炊しなおすという人は、流石に少数派ではないかと思います。
私自身は自炊をしていないのですが、別に自炊を悪いことだとは思っていません。自分で買って所有している書籍を自炊している限りは何の法律にも触れるわけでもありません(自炊代行業者はかなりグレーであるとは思いますが)。ただ、自炊というのはいずれにしろ過渡期の現象だろうなぁとは思っているので、Retinaディスプレイがきっかけで急速に衰退するというシナリオがありえるかなと思いついたので書いてみました。自炊などしなくてすむ、電子書籍が普及した世の中に早くなって欲しいものです。
(2012/4/5追記)
自炊を駆逐するかどうかはともかく、Retinaディスプレイと電子書籍について考察した記事がありましたのでリンクしておきます。