非常に面白い。
って、テーマに対して面白いというのはちょっと失礼かもしれないな。非常に興味深い。論旨は明快だし、提案もはっきりしてる。ある意味痛快とも言える本です。
本書の論旨をざっくり要約すると、このままでは日本の農業はダメになる。それは今まで日本の農業は鎖国によって守られていたけれど、TPPなどによって開国されてしまった。これからは海外から安い農産物が大量に入ってくるので、技術的に遅れている日本の農業では太刀打ち出来ないと。
太刀打ちするためには世界の最先端の農業に学ばなければならない。筆者はそれをイスラエルの農業だという。そこではドリップ灌漑をベースにIoTやクラウドやAIを組み合わせた農業が行われていると。なるほどなるほど。
話は非常によくわかるんだけども、疑問がないわけでもない。いや、批判というわけではなくてですね。
一つは、本書は当然ながら筆者の主張に従って書かれているので、本書の中では筋が通っています。しかし、それはあくまでも筆者の主張通りだから。当然ながら、筆者の主張に対して反対意見を持っている人もいるはずですね。ていうか、本書の通りなら農水省も政治家も農学会も農家も、みんな筆者の意見には反対らしいんですけどね。反対なら反対で、本書の主張のどこに問題があるのか、その意見を聞いてみたいなと思いました。要するに反対側の意見も聞いてみたいということですね。
もう一つは、本書が書かれたのが2019年であること。筆者はこのままでは数年で日本の農業は滅びると書いていますが、今は2024年です。本書が書かれてから5年が過ぎました。さて、日本の農業は滅びたのでしょうか。私自身は農業の現実について事情を知らないので、実はもう滅んでいるのかもしれないし、逆に全然滅んでもないのかもしれない。ともあれ本書の答え合わせがある程度出来るくらいの時間は経過していると思いますので、その答えが知りたいなぁというところです。筆者のその後の著書なりがあれば探してみましょうかね。