“無人コンビニ”が普及しないお寒い実情…「革命が起きる」が大誤算だったワケ
無人コンビニがなかなか普及しないという興味深い話なのですが、残念ながら記事の深みがイマイチ。もうちょっと定量的な話とかを深めてもらうといいなと思うんです。大手コンビニ幹部の話にしても、ただの予想で、あまり裏付けデータがある話ではない感じ。
さて無人コンビニですが、普及は進んでないのは事実でしょうね。町中で普通に見かける、というようなことは現時点ではないですね。本格的に導入を進めるというニュースもみかけませんし、どこも実験店舗を設置しているばかりですからね。それは事実でしょうけれど、記事にするくらいなら実験店舗数の推移であるとか、来客数や売り上げなどをもうちょっと調べて欲しかったなぁ。
無人コンビニが普及しない原因をいくつか挙げていますが、それぞれちょっとどうかなと思うのでコメントしてみます。
まず「対面によるあたたかな接客を求めている」というのは全然根拠がないですよね。記者がそれを求めているのはわかりますが、大衆がそれを求めている理由がどこにもない。しかもここでいうのはコンビニでの接客です。高級旅館に行ってあたたかな対面接客を求める人も、コンビニでは無人でも平気だったりしませんか。コンビニ接客に求めるのはスピードという人が多そうな気がしますし、対面を最優先に考える人が多数とはちょっと思えないです。
監視カメラで監視されるのに嫌悪感があるというのもどうでしょう。昭和や平成時代ならともかく、監視カメラがこれだけ普及した現代において、監視カメラを忌避する人はどれくらいいるのでしょうか。また、監視カメラでみられることを犯罪者扱いされていると感じる人もどうでしょうか。むしろ、万一万引きを疑われたときに無実を証明するために監視カメラを設置して欲しいという人だって居ますよね。その傍証としては、車にドライブレコーダーを搭載する人が非常に多いということが挙げられます。現代に置いてはむしろ映像で記録をとっておくことが自分の身を守ることに繋がると考えている人が多いのではないでしょうか。であれば監視カメラはむしろ好都合と考えている人もいると考えてもおかしくないでしょう。
キャッシュレス決済の普及率についてもどうでしょう。記者があげているのは全産業全店舗における決済における比率です。しかしここで問題になるのはコンビニにおけるキャッシュレス決済比率でしょう。これは完全に私の想像ですが、コンビニにおけるキャッシュレス決済比率は全産業よりも高いと思います。
また、記事中にあるようにオフィスの一角などの従来に出店が難しかったエリアにおいては顧客層が固定されますから、キャッシュレス決済専用でも問題にならない可能性は高いです。利用者は通りすがりの人ではなく、そのオフィスで働く人であり、コンビニを利用するのは毎日でしょう。であればそのコンビニを利用するためにキャッシュレス決済を始めるインセンティブは十分にありますよね。
ということで、無人コンビニの普及が進んでいないのは事実ですし、記者がまとめている通り、人々が少しずつ無人コンビニになじんでいくことによって普及が進むだろうという結論には同意するところではあるのですが、その根拠についてはもうちょっと具体的な情報が欲しかったなぁというのが正直なところです。
(2024/3/24追記)
ネットの反応をみてていくつかコメント。
まず「ファミマ自販機でええやん」については、その通りって感じですね。無人だし、コンビニだし、決済機能搭載だし。何も言うことないです。当然、導入できる場所は限られるので、全てにおける解決策にはならないのですが。決済を性善説に基づかせるなら、オフィスグリコでいいってのも、それもそうですねぇ。
あと、記事中にセルフレジについて言及があったことにつられてセルフレジについての反応がどうしても引き出されてしまってますね。でもこの記事においてはセルフレジ関係ないですよね。無人コンビニではセルフレジを通さず、商品をカバンに入れて店を出るだけで決済されるものですから。無人コンビニでもセルフレジを使ってもいいんですが、万引き対策を考えると結局は無人決済と同程度の監視カメラが必要になるので意味がなさそうに思います。
(2024/5/4追記)
なぜアマゾンは「レジなしスーパー」をあきらめたのか…最先端システムが「話と違う結果」になったワケ
Amazonが無人コンビニから撤退するそうで、なるほど確かにそれは無人コンビニが難しいということを表していそうですね。
記事では、Amazonは実はカメラ映像を遠隔有人監視していたとあり、もしそうだとしたら無人でもAIでも何でもないってことになりますね。Amazon自身は否定していますが。
また、無人コンビニでは多数のカメラによって監視されているのが窮屈であるとも書かれています。私自身はカメラによる監視は気にならないしむしろ好都合と思っていたのですが、よくよく考えると無人コンビニ自体を利用した経験があるわけではありません。有人コンビニの監視カメラのつもりで考えていましたが、多数のカメラで見張られているというのは状況が違うのかもしれません。これは考え直さないといけないところかなと思います。
記事の内容から勝手に推測するところですが、結局今のAIって100%の精度までは至っていないのかなという気がします。ChatGPT以降の生成AIブームでAIに対する期待が高まっていますが、そもそもChatGPTももの凄くよく間違えます。多分正解率で言えば60%とかそんなもんではないかと。よくいってもせいぜい90%くらいですかね。ただ、ChatGPTについては使う人の期待値が低いんですよね。これまでのチャットAIの歴史ってほんとにひどいものだったので、一見自然な会話にみえるだけですごいと感じてしまう。期待値としてせいぜい10%とかその程度のところに、精度60%のものが登場したので、これはすごいと言われているというところはありそうです。
一方、無人コンビニのAIに求められる精度は言うまでもなく100%です。精度90%で、10人のお客さんに一人が誤請求されるなんてコンビニ、誰も怖くて利用しないですよね。実際には一人のお客さんが複数の品物を買う場合もありますから、一人当たりの誤請求の確率はもっと高くなります。全員が10品ずつ買い物するとしたら、期待値としては全てのお客さんが誤請求をうけることになりますね。
同じことは自動運転AIにも言えるでしょうか。99%の精度がありますと言われるとすごそうな気がしますが、期待値としては100台の自動運転車があれば1台は事故を起こすということです。こんなの怖くてとても利用できないですよね。全国では毎日いったい何台の自動車が走っていると思っているのですか。
精度が99.9%になっても、99.99%になっても、さらに精度があがっても、無人コンビニや自動運転では利用者数が膨大になるため被害者が出てきてしまう。例えば被害者が全国で1日に一人くらいまで精度が高まれば社会的には許容できるかもしれませんが、それを達成する精度は99%の後ろに9が何十も連なるような高い精度が必要ってことですよね。そして、今のAIはそこまでの精度はとても出せていないと。
無人コンビニ問題って、要するにそういうことかなぁというのが現時点での私の理解です。いずれ技術が進歩してその精度は達成できるとは思いますが、そのためにはまだこれから何度ものブレイクスルーをしなければならないのではないかなと。ChatGPTによるAIブームによって急速にAIに対する期待が高まりましたが、その期待は現在の技術レベルを大幅にこえてしまったところにあったのが不幸であるかなと。
現実問題として、人間の精度を上回ればAIに置き換えることはメリットがあります。人間のレジうちだってミスはありますし、人間が運転する自動車だって事故を起こしますからね。人間の精度が99.99%だとしたら、それを上回る精度をAIが出せるならいいんですよね。
でも多分だけど、精度が人間を上回っただけではAIへの置き換えは進まないような気がする。それは感情論でもあるし、人間は最終的にミスの責任を追及できるという法律論でもあるわけですかね。AIによる自動運転車が事故を起こした場合、その事故の責任を誰が追うかという話って結論は出たんでしたっけねぇ。