大学の秋入学は実現可能なのか

2024/3/16作成

吉村府知事は現実を知らなさすぎる…日本の大学で「秋入学・英語公用化」は実現不可能といえるこれだけの理由

吉村大阪知事の考えが足りてないのかどうかはわかりませんが、大学の秋入学の実現はそう簡単ではないだろうなというのは分かります。実際、記事中にも触れられているとおり、過去に何度か秋入学の機運がありましたが、いずれも実現には至っていません。

この問題、そもそも年度が国や地域によってバラバラってところに根元があるんですよね。暦自体はグレゴリオ暦にだいたい統一されているので、年が始まるのは世界中で一緒です(時差はのぞく)。一方、年度の始まりはバラバラです。日本は4月始まりですし、アメリカは9月始まり。でもこれだけではなく、世界中の国や地域でほんとにバラバラなんですよね。なんでこんなことになってるんだと憤慨したくもなりますが、それぞれ歴史的な事情があって現状があるので、憤ってもしょうがない。

ただ、年度がずれているのは不便なのも事実なので、部分的に会わせようという話が出てくる。それが大学の秋入学というわけですね。9月始まりなのはアメリカですが、現実的にアメリカが世界の中心ですし、日本としても主につき合いがあるのはアメリカですから、そこに合わせにいくのは理にかなった話ではあると思います。

似た問題はサッカーのJリーグにもあります。サッカーの中心であるヨーロッパリーグは秋に始まりますので、それに会わせたシーズンにした方が選手の移籍がしやすくなります。その議論が20年くらい続いて、ようやく最近になって秋開始に移行することになりました。一方、野球についてはMLBが春開始なので、日本のプロ野球のシーズンを変えようという話は出てないですね。

本題に戻って大学の開始時期です。春開始だとどのような問題があるでしょうか。日本の高校生がアメリカの大学に進学する場合、3月に卒業して9月の入学まで半年間の無所属期間が生じてしまいます。逆にアメリカの高校生が日本の大学に進学する場合も同様ですね。ただ、これも本当に問題かというと疑問で、欧米にはギャップイヤーといって大学入学までに長期間のモラトリアム期間をとる習慣があるそうで、半年程度の無所属期間は特に問題にならないような気もします。

また、現実問題として海外留学するには語学の問題がありますので、半年間を語学学校に通う準備期間にするという方法もあるでしょう。語学が堪能でも国を越えて移住するには生活を確立させるのに時間がかかりますので、そういう意味でも半年程度のギャップがある方がむしろ望ましかったりもしませんかね。

さてそんな秋入学ですが、実はすでに実現してる大学があります。それは放送大学。放送大学では春入学と秋入学で、1年に2回の入学時期が設定されています。そもそも放送大学は科目履修生など多様な学び方が用意されているので、その一環として秋入学もあるのだろうと思いますが、ともあれ多くの大学で導入可能な秋入学対応方法だと思うんですよね。そして調べてみると放送大学以外にも主に国際系の大学・学部で秋入学を実施しているところはあるんですね。

そもそも大学は高校までとは違ってクラス一斉の授業スタイルではありません。大学が用意した科目を学生が自由に履修申請してカリキュラムを自分で組み立てていきます。学年ごとに履修するとよい科目の設定はありますが、個人ごとにこの科目は来年に回そうなどとする自由があります。

つまりですね、春入学だろうが秋入学だろうが、入学してしまえばあとはどの科目を履修するかは本来大学では自由なんですよね。秋に入学して科目を履修し必要な単位を取得すれば4年後の秋に卒業できる。これなら春入学を変えることなく秋入学に対応できますよね。

ということで大学を秋入学にしたいのなら全学生を一斉に秋に変更するのではなく、春入学に加えて秋入学を認めるようにすればいいのではないかなというのが私の考えです。