前職がフルリモートワークの職場でした。2年半ほど働いたのですが、その間オフィスに行ったのは初日にPCを引き取りに行った時と、最終日にPCを返却に行ったとき。それに加えて、自宅のルータが故障したので代替機が来るまでの間だけ出社したのがありましたけど。トータルで4日かな。チームメンバーと直接顔をあわしたのは、飲み会があったときの一度だけでした。こんな感じのフルリモートワークだったのですが、自分なりの感想をちょっとまとめておきます。
まず前提として、個人的にはリモートワーク大歓迎です。職業がITエンジニアですから、仕事はPCが1台あればどこでも出来ます。自宅でも、カフェでも、旅先でも。実際にはセキュリティの問題から自宅以外の場所での就業は禁止されていましたけどね。それでも通勤時間はないし、仕事の合間に家事は出来るし、宅配便の受け取りは出来るしで、リモートワークは大変便利です。仕事が始まるまでの朝の時間に個人開発も随分はかどりましたし、仕事が終わってから趣味の活動をする余裕も十分にあります。
という感じでリモートワークいいなぁと思うし、実際にやってみてメリットも多かったんですが、当然ながらデメリットもあります。それはどこででも言われてますが、コミュニケーションの問題。
より直接的に言ってしまうと、チームビルディングがフルリモートだと困難なんですよ。仕事自体はフルリモートでも回りますよ。与えられたタスクをこなしていけばいいんですから。わからないことがあった場合に相談するのだってチャットで十分に行えます。そりゃオフィスで隣の席に座ってる同僚に聞くのに比べるとハードルは高いですが、慣れればそれほど問題でもありません。でもチームの一体感のようなものはなかなか醸成されない。なので、一人1タスクのような環境の職場ならフルリモートでもそれなりに回りますが、チームワークが必要になる職場だと難しいかなと思います。当然、愛社精神みたいなのも簡単には育ちません。
ここまでは世間でもよく言われてることなんですが、この問題の根本ってマネジメント層には実感がないことなんじゃないかと思うんですよ。なぜなら、リモートワークが進んだのってコロナになってからだから。つまり、現時点においてわずか3年間の歴史しかないんですね。
マネジメント層というのは当然ながらその会社で長年働いて実績を上げている人が多いです。もちろん例外はありますけどね。長年働いているということは、当然コロナ前からその会社で働いています。その頃はフル出社でした。なので、彼らはオフィスでチームビルディングも済ませた状態で、コロナ禍のリモートワークに入ったわけです。
一方、コロナ禍以降でも新人は入ってきます。新卒だったり中途入社だったりですけれども。これらの新人は最初からリモートワークなんですね。なので、彼らはチームや会社に溶け込むのがなかなか難しい。でもその難しさがマネジメント層には実感として伝わらない。ここの実感の格差が問題の一番の根本かなと思います。
今後、5年10年と経過していくと、フルリモートワークで入社した人がマネジメント層になることも増えるでしょう。そうした人は、フルリモートワークのチームビルディングの困難さを実感として理解しているので、その対策も行えるでしょう。なので、この問題はそれまでの過渡期の問題かなと思います。
(2023/11/27追記)
フルリモートワークが困難な例をひとつ思い出しました。それは普段接点があまりない他部署の人と一緒に仕事をする場合。常に自チームだけで完結するとは限りませんよね。仕事って。
フルリモートワークですから当然他部署の人ともチャットやテレビ会議で情報交換を行います。他部署の人は名前と役職くらいは知ってることはあっても、どんな人でどんなスキルを持ってるかまでは知りません。もしくは名前すら今回の案件で初めて聞いたってこともあり得ます。
フルリモートに限りませんが、コミュニケーションってお互いの共通の知識基盤があってこそ成り立つものなのですよね。普段接点のない部署の人とは、当然ですがその共通の知識基盤がありません。なのでチャットでコミュニケーションしても、常にお互い何かズレたことを言い合っていて、一向に話が前に進まなくなってしまいます。
コロナ前の場合、こういう他部署コラボ案件だと初回に顔合わせミーティングとかやってましたよね。当時はしょうもない風習だなぁと思っていましたが、少なくともそれで多少の人となりなどは理解することが出来た。意外と役にたっていたんだなぁと今にして思います。
なお、こういう問題に対して「それは今までなあなあに済ませてきた組織の課題があぶりだされただけで、リモートワークは関係ない」って指摘があります。それ自体は正論だと思うんですが、そうした組織の課題に真正面から向き合って解決できるのってすごく優秀な人だけが集まっている組織だと思うんですよ。一方、大抵の組織ではそんな優秀ではない私のような凡人も含まれていて、そんな凡人もなんとか頑張って成果を出さないといけないわけでして。そんな凡人がなんとか成果を出すための方法の一つが顔合わせミーティングとかの、優秀な人からすると無駄に見える風習なんじゃないかなぁという風に考えます。