10月末はハロウィン。ここ数年、渋谷では乱痴気騒ぎがあるとして問題になっていたのに対して、今年は渋谷区がかなり強硬な抑制策を取りました。抑制策が功を奏したようで、人出も騒ぎも例年に比べるとかなりおとなしかったそうです。
路上飲酒したり、ケンカしたり、時には車をひっくり返したりとかってのは、そりゃま確かに困ったことではありますね。しかも渋谷ハロウィンが世界的に有名になってしまって「ハロウィン時期の渋谷は無秩序に暴れていいそうだ」ってことで世界中から暴れたい若者が集まってくるとなると、そりゃま悪夢ですわね。オーバーツーリズムの一種とも言えますし、この夏にかなり話題になった富士山迷惑登山(なかには事実上犯罪行為も)と変わらないのかもしれません。
犯罪だったり迷惑行為だったりは確かに迷惑なんですが、一方でああして騒ぎたい暴れたいってのは人間の根源的な欲求の一つなんだろうなという気もします。というか、既存のお祭りも要素としては似たようなものがあるんじゃないでしょうか。
祇園祭みたいな静のお祭りもありますが、一方でケンカ祭り的なのもありますよね。お神輿や山車をぶつけあったり、だんじりを高速でひきまわしたりとかは、車をひっくりかえしているのと行為と当人たちの高揚感は似たようなものの気がします。お祭りの当事者からは、渋谷ハロウィンなんかと一緒にするなと怒られるとは思いますが。
路上飲酒にしてもそうですよね。ご町内のお祭りでも、神輿の担ぎ手のみなさんは合間の休憩に缶チューハイをぷしゅぷしゅさせているもんです。なんならその缶チューハイはコンビニで買ってきたもんじゃなくて、祭りの主催者からの提供だったりしますしね。
ということで、犯罪や迷惑行為は困るけれども、ある程度の秩序の中で暴れたいという欲求はあるもんだと思うんですよ。そして既存のお祭りと渋谷ハロウィンの最大の違いもそこなんだろうなと。主催者が居て、段取りも決まっている既存のお祭り。自然発生して主催者が存在せず、無秩序に暴れるだけの渋谷ハロウィン。加えて言えば、お祭りは地元の顔見知り同士が参加しますから、その関係性のなかで一定の歯止めも期待されるのに対し、渋谷ハロウィンに集まる人たちはお互いに一切知らない人ですよね。後者の、広範囲からお互いに知らない人たちが集まってくることによる無秩序さは、近年の花火大会などでも起こってますよね。
なんでも反対意見を言って自分の存在感を示したいコメンテーターの人たちは、渋谷区が今年抑制策をとったことを批判してますね。せっかく渋谷ハロウィンが世界的なイベントになれるチャンスだったのにそれを潰してしまったと。言ってることに一定の理はあるとは思いますが、現実的にその制御を渋谷区や地元の商店会が仕切るというのは困難を極めるんじゃないかと思います。そもそも渋谷区は行政体であって祭りを実施するノウハウなんてありませんし、商店会だってそうですよね。大手のイベント会社に入ってもらってっていっても、世界的なイベントになりつつあった渋谷ハロウィンを制御しきれるイベント会社なんて存在しないでしょう。だって世界で今までなかった規模のイベントなんですから。
渋谷ハロウィンがもっとゆっくりと成長していれば、制御側も一緒になってノウハウを獲得しつつ成長していくことも出来たのかなと思います。しかし、渋谷ハロウィンについては、その速度が急すぎた。制御を完全に外れてしまったのであれば、もう強制的にでも抑制させるしかないというのが現実的な話だと思います。せっかく世界的なイベントになれそうだったのにと仰るコメンテーターの方々は、口だけじゃなく是非ご自分で渋谷ハロウィンを成功させてみて欲しいものだと思います。言うだけなら誰だって出来るんだから。