一般に年を取ると頭が固くなると言われます。それについて、こんなからくりじゃないかなぁと思ったので少し書き出してみます。
まずあるのは、老化現象の一つとして脳の機能が衰えることから起こること。これは多分あるんだろうなぁと思いますが、実際にどれくらい研究が進んでいるのかはよくわからない。脳科学といういかにもそれっぽい分野な学問は、どうにも怪しいテレビタレントばっかりが有名になるので、研究分野自体がどうなんって雰囲気が漂ってしまって。多分真面目に研究してる人がほとんどだとは思うんですけどね。
というのとは別に「うちの上司は頭が固くて提案しても全然いうことを聞いてくれない」みたいな、いかにもよくある話のパターンが、実はこんな仕組みで起こってるんじゃないかなという話です。
上司に限りませんが、一般に年長者はこれまで長い人生を歩んできています。その人生の中では多くの経験を積んでいますし、関連して学んだ知識も膨大です。そうするとですね、その人の中で経験と知識が融合してある程度の価値観が固まっていくわけですよ。経験から学ぶ人を愚者と呼びますし、よくある「それN=1ですよね」って話ですが、長い人生の中での経験の積み重ねだからNも10とか20とかになってて、N=1に限った話でもないんですよ。それに合わせて知識も追加されているので、全く荒唐無稽な価値観でもないんですね。それなりに理にかなった価値観なわけです。その人なりの正解の方法と言ってもいいと思います。
逆に若い人は思考が柔軟と言われますが、これ言い換えれば知識も経験もない、頭が空っぽってことでもあるんですよね。どんな考え方でも言われれば抵抗なくすぐに頭に入ってしまう。それって要するに自分軸が無いとも言う。支配したい大人からしたら、こういう若者はコントロールしやすいので歓迎されますよね。そりゃそうだ。
逆に大人は自分軸があるから、外部から何かを言われたとしても常に自分の価値観と照らし合わせが行われる。だから外部からは頭が固いように見える。こんなロジックのことが起こってるんじゃないかなぁという気がします。
ああ、もちろんですがここでいう大人ってのは、それなりに理性的で、それなりに客観性のある知識を手に入れた人についてです。トンデモさんだったりは、いくら一生懸命勉強してたとしても、やっぱりトンデモでしかありません。
また、大人が身につけている価値観の中には、人それぞれ考え方が違うって真理も含まれていますから、他人の考えを頭ごなしに否定することもありません。ただそれに無批判に従うわけではないってだけですね。逆に若者の方が初めて手にした価値観を絶対真理と思い込んでしまって他者にも強要する傾向にあるんじゃないかなぁという気もします。若者に限りませんけどね。SNSなどで暴れてる人も実は中身は中年だったりするらしいですし。
(2023/10/26追記)
読み返してみるとあまりにも年寄り礼賛で自分でもさすがにちょっとどうかなと思ったので補足を少々。
まず当たり前の話ですが、年寄りがなんでも正しいとは思ってません。そもそも昔の知識が現在でも正しいとは限りません。美味しんぼの原作者は「乳児にはちみつを食べさせてなんで悪いんだ。俺が子育てしてた頃は当たり前に食べさせてたぞ」と言っていましたが、それは乳児とボツリヌス菌に関する知識がここ数十年でアップデートされたから。美味しんぼの原作者は単にその知識のアップデートが行われていなかっただけですね。これは年寄り側がというか、知識をアップデートしてない側が悪い。いつまでも天動説に固執してるようなものですね。
そういうある程度客観的に正誤が決まるもののほかに、社会一般の価値観のアップデートもありますよね。近年の権利意識の向上などなど。昭和の時代にはこれが当たり前だったということが、令和の今では通用しないことはいくらでもあります。その辺をアップデートしてないのも老害として一蹴していいでしょう。
この記事で言いたかったのは、そういうのを除いて、いつの時代でも普遍的でありつつ、一方で人によって考え方が変わるようなこと。要するに価値観ですかね。年寄りが価値観を定めていて他人から言われても価値観を変えられないのは、それだけ自分軸があるからってことかなという話です。一方で、年寄りが価値観を他人に押し付けだしたら、それはそれで老害だと思います。はい。