お勧めの10巻以内のマンガ

2023/3/22作成

漫画家が「10巻以内に完結するオススメの漫画」を募集したところ様々な人から作品が集まる

年末に話題になったこちらのまとめ。今頃になってですが、私も少々あげてみたいと思います。

ちなみにですが、こういうのってネットにもたくさん記事がありますよね。まあ大半はお金目当てのアフィリエイトなんですが、個人で純粋に自分の好きな作品を紹介してる人もたくさんいます。結局、みんな自分が好きな作品について語りたいんですよね。ってことで、この記事は私が私の好きな作品について語りたいから語るだけの記事です。誰得だよというと、私が得するだけの記事です。まあ、このサイトの記事は全部そうなんですけどね。

そして10巻という制限を越えてしまうけど自分が好きな作品もあげておきます。要するに語りたいってのもだけど、自分で自分の好きな作品リストってちゃんとまとめてなかったなと思うのでここで書き記しておこうかと。時々自分にとっての好きなマンガベスト10とか考えるんですが、あとで何をあげたっけって忘れてしまうんですよね。好きなのに忘れるんかいって言われそうですが、記憶力悪いもので。多分ここでリストをあげますが、いくつかぬけはあると思いますので、思い出したら追記します。

こうしてリストアップしてみると、圧倒的に古い作品が多い。というか古いのばっかり。古いと言っても昭和後期くらいであって、貸本時代とか戦前とかまで遡ったりしないんですけどね。忍者武芸帳は貸本マンガですが。

古い作品に偏ってしまうのは二つの理由からだと思います。一つは私自身が読んだときに若くて感受性が豊かだったこと。もう一つは人生経験も読書経験も乏しくて、読んだ作品すべてが新鮮に感じられたこと。アラフィフになった今は、どちらも持ってないものなんですよね。特に後者については、面白いと評判で読んでみても、ああこれはあの作品の亜種だなぁと類型化してしまったりするんですよね。類型であったとしても、新しい部分もあるとは思うんですが。

では最近は全くマンガ読んでないかっていうとそんなことはないし、それなりに楽しんで読んでいるつもりでもあります。幸いというか、ここ数年は読書記録をちゃんとつけるようになりましたので、いずれその読書記録から面白かった作品のリストアップをしてみたいと思います。

忍者武芸帳:白土三平

私にとってのマンガ作品のベストオブベスト。これが一番。白土三平先生なら「カムイ伝」を推す人が多いと思うんですが、個人的にはこちらです。比べるもんでもないかもしれませんが。

中学生の頃、図書館にあるのをたまたま見かけて手に取って読んでハマったんですよね。当時コロコロコミックくらいしか読んだことのなかった身には、劇画の刺激は圧倒的でした。加えて、当時は時代小説をよく読んでいたので、登場する時代背景や人物に馴染みがあったというのも大きいです。

敵役もいいんですよね。憎らしいくらいにイヤな坂上主膳もですが、なんといっても蛍火。「忍者は術に生きる……」「死してももし術がのこれば生きることになる。」って凄いじゃないですか。

いきなり10巻以内ではないですが、ともかく私にとって最高のマンガはずっとこの作品。変わらない。

火の鳥:手塚治虫

説明の必要がないくらい有名な傑作。だと思うけど、なんだかんだ古いので最近のマンガ評では挙がってこないことも多いのかもしれない。手塚治虫先生が亡くなられて30年以上経つしねぇ。「火の鳥」は今調べたら11巻だそうなので、10巻以内というリストには入らないのかもしれないけど。でも連作であって一つ一つの作品で基本的に完結してるから、一概に10巻以上とも言えない気もするんだけどね。最後に現代編が描かれるはずだったけどかなわなかったと。

「火の鳥」はもちろん傑作なんだけど、恐ろしいのは手塚治虫さんってこのレベルの作品を大量に描いてることなんだよね。「火の鳥」に匹敵する作品を描いた漫画家は他にもいるけれど、ここまで多作な漫画家って他には居ないんじゃないかな。たった一人の人間がここまでの偉業を成し遂げられるものなのかという意味でも、マンガの神様と呼ぶにふさわしい方ではないかと思う。

アドルフに告ぐ:手塚治虫

上でも書いた通り手塚治虫先生は多作なので、私はまだ全作品を読めてません。というか読めてない作品の方がはるかに多い。全集買いたいけど、置く場所も読む時間もと考えると躊躇してしまう。言い訳ですが。

ということで読んだことのある中での強く印象に残ってるのがこちら。ここまで濃厚、重厚な作品をマンガで描けるのかとおののいてしまいました。とても陳腐な感想ですが、深く考えさせられてしまった作品です。

個人的な思い入れとしては、自分の出身地である神戸が舞台のひとつというのもあります。私の実家がパン屋でしたので、父や祖父が暮らした戦前の神戸はこんな感じだったのかと知れたのもよかったです。

藤子・F・不二雄のSF短編:藤子・F・不二雄

手塚治虫先生と並んで多作で傑作揃いの藤子・F・不二雄先生の異色短編集。手塚治虫先生は晩年に向けて画風を大きく変えていますが、藤子・F・不二雄先生はそのまま。手塚治虫先生は大人向けのマンガに推移して行ったのに対し、藤子・F・不二雄先生は子供向けマンガを一貫して描き続けたという意味では、別の意味でマンガの巨人。そんな藤子・F・不二雄先生が、タッチを一切変えずに作風だけをガラっと変えて描いたのがこちら。本人が「お子様ランチ」と称する画風でこの作風なので違和感バリバリではあるんですが、そんな違和感を吹っ飛ばすほどに凄い内容です。

ありきたりな感想ですが「ミノタウロスの皿」や「カンビュセスの籤」は深く考えさせられますし、「一千年後の再会」などはS.Fとして傑作だと思います。

辺境警備、グラン・ローヴァ物語:紫堂恭子

当時出入りしていたパソコン通信で紹介されていて読んでドはまりしました。めちゃくちゃいいです。「グラン・ローヴァ物語」は星雲賞を受賞してますが、さもありなんです。

作品数がそれほど多くないというと大変失礼な感じですが、個人的には以後の作品も全て追いかけている漫画家さんです。「エンジェリック・ゲーム」が未完になってしまったのは大変残念。しょうがないけど。

東周英雄伝:鄭問

これもパソコン通信で教えてもらったんだったか。当時購読していたアフタヌーンでは同じ作者の「深く美しきアジア」が連載されていたんですが、途中から読んでいたこともあって正直ストーリーがよくわからなかった。でもこっちは単行本で読んだ上に1話完結ということもあってとても面白かった。いや、そんな理由関係なくとてつもなく面白かった。

どの話も凄まじいエピソードなんですが、驚くのはこれが全部春秋戦国時代という紀元前のことなんですよね。日本はその頃まだ縄文時代から弥生時代。まだ国家としての形も出来て無かった頃なのに、中国ではこれだけの文明・文化を築き上げていたと。中国って恐ろしい国だなと改めて思います。

そして、おそらくだけれどもここに出てくるエピソードって多分中華圏の人にはある程度共通の教養として持っているものなのかなという気がします。例えば日本人なら豊臣秀吉が草履を温めた話とか通じますよね。中華圏の人にとってのそういう位置づけの話なのかもしれないと。よく外国語を学ぶときにその国の文化も学んだほうがいいという話がありますよね。英語なら聖書やシェイクスピアからの引用が日常会話にもふんだんに出てくるのでそういう知識も必要と。春秋戦国時代の諸子百家の話というのは、中華圏におけるそういうバックボーンの位置づけになるのかなと思いました。知らんけど。

風の谷のナウシカ:宮崎駿

説明の必要がないくらいの名作。これ読んで感動するなって方が無理です。絶対無理。何度読み直しても心震える。宮崎駿先生はもちろんアニメーション作家として優れた作品をたくさん作ってるわけですが、漫画家一本でやっていたとしても物凄いことになっていたんじゃないだろうかと思わされます。宮崎駿さんのマンガって「風の谷のナウシカ」と「シュナの旅」しか読んだことないんですが、他には描いているのかなぁ。

逆境ナイン、燃えよペン:島本和彦

島本和彦先生といえば熱血ギャグなんですが、やはり根底にあるのは熱い心なんですよね。ギャグと言っても熱血を茶化すわけではなく、照れ隠しとしてでもない。熱血を貫き通すなかでのギャグがある。

ご本人の解説で、「逆境ナイン」は若い頃の「うおお」という勢いを叩きつけた作品であるとのこと。他の作品では単行本にするときに修正を入れるんですが、「逆境ナイン」だけは修正することで勢いが失われるような気がして出来ないとありました。そういう意味でも、おそらく初期の代表作になるんじゃないでしょうかね。

そして「燃えよペン」。ご本人曰く卑怯なジャンルに手を付けてしまったとのことですが、これが発展して「吼えろペン」、「新吼えろペン」、「アオイホノオ」へと繋がっていくわけですが、その「アオイホノオ」が小学館漫画賞を受賞した時のコメントとして「この作品で取ってしまったか」と仰っていたので、卑怯なジャンルという思いは今でも持ってらっしゃるのかもしれない。でもこれも代表作ですよねぇ。個人的にはうかつ けんじ先生との野球漫画対決のエピソードが大好きです。

かくかくしかじか:東村アキコ

東村アキコ先生の自伝的マンガ。登場する日高先生は無茶苦茶なんですが、これでも控えめに描いているというのは驚き。実際はどんなだったのか。日高先生の最後の言葉の「描け」は重い。重すぎる言葉だ。

あっかんべえ一休:坂口尚

一休宗純といえばアニメの「一休さん」で有名ですが、当然ながらその後の人生もあったわけで。というか、実在の人物であったと私が知ったのも随分後になってからなんですけどね。

かなり史実に忠実っぽい気がするけれど、実際にどこまでが史実でどこまでが坂口尚先生の創作なのかはよくわかりません。史実だとしたら一休宗純という人物自体がそれだけ魅力的な人物だという事ですが、それをマンガとしてここまで描き切った坂口尚先生も凄いと思います。完結した直後に坂口尚先生が急逝されたことで、二重の意味で生死を考えさせられることになってしまった作品でもあるかなと思います。

Hey!ブルースマン:山本おさむ

音楽マンガというと大抵は主人公が音楽に目覚めて上達し売れていく成長ストーリーなんですが、この作品は全く逆。主人公たちは人生の峠を過ぎたおじさん。そもそもめっちゃ売れてるわけでもない。最後のツアーとしてボロ車に乗って全国を旅してまわるわけですが、行く先々で出会う人たちも順風満帆の人生を歩んでるわけでもない、それぞれ失敗や後悔を抱えている人たち。これぞブルースと言ってしまうと安直に過ぎますが、でも成功譚だけが音楽じゃないですよねぇ。

白眉はなんといってもB.B.キングと共演するシーン。ステージ上で祝福されたかのような体験が描かれます。音楽に全く詳しくない素人の意見なんですが、これ大切なことだと思うんですよ。メッセージを伝えたいとか観客を喜ばせたいとか、それはそれでもちろん大切な事なんですが、演者自身が心の底から音楽を喜ぶってのが根底なんじゃないかなぁと思います。

エリア88:新谷かおる

こちらは中学の時の同級生の富永くんに貸してもらってはまりました。富永君ありがとう。当時はまだ連載中だったので、完結まで読んだのはだいぶあとになってからですね。

とにかくもう説明の必要がないくらい名言だらけで影響されまくりです。普段の会話に「スミソニアンだってこんなにちらかっちゃいないだろうさ」ってセリフが出てしまうくらい影響されてしまってます。うん。凄いよね。

銀と金:福本伸行

福本伸行先生と言えば「カイジ」などが代表作になるわけですが、面白いんですがなんと言っても長い。「カイジ」はとりあえず第一シリーズだけは読みましたが、その後のシリーズはまだ読めてません。いつか読めるだろうか。「最強伝説黒沢」も第一シリーズは読みましたし面白いんですが、続編にはまだ手が出せてないんですよね。

そんななか、「銀と金」はコンパクトにまとまっているので大変読みやすい。まあ、実際には打ち切りになってしまったっぽくはあるんですがね。でもこういう作品ってエピソードを連ねていけばいくらでも続けられるわけで、逆に言えばエピソードの切れ目で終わればきれいに完結できるとも言える。そんなこと言ってたら「続・銀と金」が始まったりしかねないんですが。

魔少年ビーティー:荒木飛呂彦

荒木飛呂彦先生と言えばジョジョなわけですし、今や漫画家というよりもジョジョ作家といっても過言ではないくらい描くもの全てがジョジョになってらっしゃいます。その荒木飛呂彦先生の初連載作品がこちらですね。連載当時ジャンプで読んでいて、第1部完となっていたので素直に第2部が始まるのを待っていました。我ながらアホですな。実際には人気が出なくて打ち切りなのです。あとお約束ですが私も最初はビューティーだと誤読してました。BTなんですよね。ぶきちではなく、寺沢武一先生のイニシャルからとってるとのこと。

デビュー作の「武装ポーカー」にしてもなんですが、「魔少年ビーティー」くらいまでは主人公が純粋正義ではないんですよね。そこが魅力だと思うんですが、やっぱり少年マンガとしてはそれではうまくいかなかったようで、その後の作品ではだんだん主人公が正義になってしまう。それでもまあビーティーはディオとして生まれ変わって長らく活躍したわけなんですけどねぇ。でも個人的にはビーティーのままの続きが読みたかった。

サルでも描けるまんが教室:相原コージ、竹熊健太郎

世紀の奇書と言っても過言ではない作品。ギャグマンガとしても猛烈に面白いですが、既存のマンガの作画、作劇から業界事情までを整理分類してしまっている、マンガというものを解読した作品とも言える。実際のところどこまでその解読が正しいのか素人の私にはわかりませんが、少なくとも読んだ者になるほどなと思わせるだけの説得力がある。

こういうメタ構造の作品が登場するのはそれだけマンガという世界が豊穣である証拠でもあるのではないかと思います。サルまんは今でも価値を放っているとは思いますが、描かれてから30年。昨今のマンガ事情を反映した現代版サルまんを誰か描いてくれるといいんじゃないかなぁ。相原コージ先生と竹熊健太郎先生がサルまん2.0としてチャレンジはしたけれども、途中で断念してしまってるんですよねぇ。

眠兎:浅田弘幸

浅田弘幸先生が当時傾倒していた中原中也に影響されて描かれた作品。だと思う。そんなに凄いなら中原中也の詩集も読んでみようかと思いつつ、未だに読めてません。だめだめ。読んでも私に理解できるとも思えないけれども。

作品自体も非常に繊細でガラスのように壊れそうなのですが、どうやら描いていた浅田先生自体も繊細で壊れそうだったそうで、担当編集者によれば、これ以上描いたら浅田が壊れてしまうということで終了になってしまったそうで。であれば、きっとこの作品はこのままでよかったんだと思います。

岳人列伝:岳人列伝

あろひろし先生が「とっても少年探検隊」の「天国に一番ちかい教室」を描く際に資料として読んでみたら感動してしまったと紹介してらして、どんなものかと思って読んでみたら案の定感動しました。落ち着いて考えれば無茶苦茶な話ばかりなんですが、登山という極限の環境ではそんな無茶苦茶が通ってしまうものだろうかと思わされてしまう。でもこれを読んでも高所恐怖症の私は登山がしたくはならないんですけどね。

(2024/10/31追記)

そういえばこれ忘れてたってのを思い出したので追記。多分こういう記事って延々と追記を繰り返していくんだろうね。それでいいんだけども。

11人いる!:萩尾望都

萩尾望都先生の場合他にもたくさん傑作があるんですが、どれも重厚すぎて正直私にはちょっと重たすぎる。その点、この作品は明瞭でわかりやすく、なおかつ内容としてもとても面白いという点でバランスがよい作品ではないかなぁと思います。

海街diary:吉田秋生

「BANANA FISH」とどっちを挙げようか悩んだけどこちらを。両方挙げてもいいんだけどね。「海街diary」は作品としての完成度ももちろん高いんだけど、これまで吉田秋生先生が描いてきた作品群の集大成のような位置づけかなぁと個人的に思っているので、この作品を挙げました。

レベルE:冨樫義博

これいいんですよね。私なんかがお勧めしなくても、いろんな人が挙げているとは思うんですが。読んでて強く感じるのは「ああ、作者がこれを本当に楽しんで描いてるんだろうなぁ」ということ。それが伝わってくる楽しさ。そして3巻というほど良い長さで綺麗に完結しているのも重要。大人の事情による引き延ばしにあわなかったということなんですよね。