マッチングサービスの矜持

2022/10/21作成

つらつらと考えるに、特にネット業界においてマッチングサービスってのはビジネスモデルの一つのトレンドなのかなぁという気がします。トレンドと言ってもここ数年の話じゃなくて10年以上の話だとは思いますが。

例えばUber Eatsとかもそうですよね。消費者の立場からすると配達員はUber Eatsの社員のような気がしますが、実際にはそうではない。Uber Eatsがやっているのは消費者と配達員のマッチングを行っているだけ。だから配達員がトラブルを起こしても、Uber Eatsはそれは配達員の責任であって我が社は関係ないというスタンスをとる。

純粋にビジネスモデルとしてみると、これって利口な方法だとは思うんですよ。扱うのは情報であって、モノやサービスではない。要するに「持たない経営」ってわけで、その分身軽に出来るし、手早く大きく成長させることも出来る。これが自社で配達員を雇っていると、採用して教育して全国の拠点に配置して。更に拠点や自転車の設備投資も大変。そうなると莫大な資金も必要になるし、事業を成長させるのにも時間がかかる。更に冒頭に書いた通り、いざ事件が起こったら責任が発生する。それらを全部すっとばせるわけですから、確かに利口なビジネスだと思います。

私は別にマッチングサービスの全てを否定したいと思ってるわけではないんです。そもそもマッチングサービスだって昔からあるものです。例えば不動産仲介業などもマッチングサービスですよね。でも不動産仲介業は法律で様々な規制を受けていますし、売買後の責任も一定範囲負わされています。Uber Eatsなどの新進のマッチングサービスとはそこが大きく違う。

レアなケースでしょうが、Uber Eatsは配達員がつまみ食いすることなんかもあるそうですね。実際の事件として起こっているかはわかりませんが、住所がわかって、しかも対面で受け渡しをすることから、配達をきっかけにストーカーになることもあり得そうです。もっと短絡的に配達から即強盗に転じる可能性だってありますよね。そういうリスクは従来の宅配便の配達員などでもあったわけですが、宅配便配達員は基本的に宅配会社の社員なので身分が明らかであったし、会社の教育や訓練によってある程度安全性を確保できていた。しかし、Uber Eatsの配達員は誰でもスマホ一つあればいつでも簡単に登録出来てしまう。まあ、Uber Eatsも最近は登録者教育に力を入れてきてるそうですけれども。逆に宅配便の配達員は再委託の自営業者が増えてきてリスク増大してたりもするけれども。

私が知ってる範囲で最悪のケースはベビーシッターマッチングサービスのキッズラインの事件でしょうか。キッズラインでマッチングしたベビーシッターが子供に対して性犯罪を行ったという事件です。これもキッズラインはマッチングを行っただけで、キッズラインの従業員が性犯罪を犯したわけではない。法律的にはキッズラインは白でしょう。でもそれでいいのかなって個人的には思うわけですよ。

情報をやり取りするのも商売です。情報はタダではないというのはそうなんですが、情報をもとにモノやサービスが動いているのに、そのモノやサービスに対して責任はありませんと切り離すのって、それは責任逃れなんじゃないかなと思ったりもするわけですよ。まあ、私の頭が古くて固いのだろうとは思いますから、今どきのイケてるベンチャー経営者からは鼻で笑われる価値観だとは思いますけれどね。