Windows 7の2020年問題で、PCの大半の用途はタブレットに置き換わるのではないかと予想し、見事外れたと書きました。それに近しい話として、こんな記事がありました。
iPadの登場から10年たっても改善されない「iPadの失敗」とは?
この記事の筆者もタブレットによるPCの置き換えを未来として予想し、それが実現しなかったと嘆いている点では私と同じです。しかし、そこで理由として挙げている2点はどちらも私には同意できませんでした。
まずファイルではなくアプリベースであることが欠点としていますが、これはむしろタブレットやスマホの長所です。より言えば、クラウドサービスの長所でもあります。スマホやタブレットのアプリでは端末自身にデータを保存することもありますが、大抵はクラウドにデータを置きます。その点ではアプリはウェブアプリと本質的には同じなのです。これらのクラウドサービスではファイルの存在を意識することはありません。ユーザが取り扱いたいのはファイルではなくデータなので、ファイルを意識せざるを得ないPCはむしろ遅れた存在とも言えます。
ただし、補足としてあるアプリ間の連携が難しいというのは同意します。同じ事業者の展開するクラウドサービス間ならともかく、違う事業者のクラウドサービス間ではクリップボードくらいしかデータ連携する手段はありません。また、複数のウィンドウを同時に表示できないと言うのも不便ですね。画面の小さなスマホはともかく、画面が大きなタブレットではマルチウィンドウが出来てもよいと思うのですがね。
ここでちょっと思いついたのは、データにもシェアの仕組みを用意して各サービス間で仕様を共有することで改善できないですかね。多くのウェブ上の記事にはSNSシェアのボタンがあって、簡単にSNS投稿できるようになっています。これと似た感じでクラウドサービスで扱っているデータに対してシェアボタンをクリックすると、データ共有用のURLを取得することができるようにします。別のクラウドサービスでデータ共有用URLを使用すると、元のクラウドサービスのデータを参照できると。この仕組みだけではデータ共有用URLを知っている人なら誰でもデータにアクセスできてしまうのでセキュリティ上の問題がありますが、基本的な考え方は行けるんじゃないかと思うんですが、どうでしょうかね。
二つ目のアプリストアも欠点ではなく長所でしょう。むしろ、WindowsにしてもmacOSにしてもストアに対応しており、今後ストア以外からのアプリケーションを使用することは制限されていく方向にあるのは間違いないでしょう。開発者やクリエーター、PCマニアはともかく、一般のオフィスワーカーにとって、自由にアプリケーションをインストール出来る必要はありません。仕事に必要なアプリケーションが使えればそれで十分であり、それは大抵はアプリストアで配布されることでしょう。そもそも、ある程度まともに情報システム管理されている企業なら、一般のスタッフに対して自由なアプリインストールの権限は渡していないでしょう。
筆者の主眼としては、自由な開発競争が行われることで豊饒なアプリ市場が育つという観点なのだろうと思いますが、それはPC黎明期のヒッピー文化華やかなりし頃に通用した話であって、PCが社会の根幹を支える時代になっては通用しない考え方でしょう。個人的にはヒッピー文化に憧れるのもわかるのですけれどね。でもそれはもう通用しない。懐かしんでも西部開拓時代にはもう戻らないのです。
ということで、個人的にはなぜオフィスにタブレットが普及しないのか、やっぱりよくわからないなと思うところなのです。