いささか旧聞に属する話ですが、芸人の宮迫氏他が反社グループの宴会に闇営業したという事件がありました。ネットでも随分と話題になりましたし、テレビでも大きく取り上げられていましたね。私自身はさして興味がないつもりではありましたし、実際ネット上にコメントしたりもしなかったのですが、なんだかんだといいつつネットニュースになった記事を読んでもいましたので、PVに貢献するという形で炎上に参加していたと言えるでしょう。
闇営業とそれに付随して発覚した吉本興業の不適切契約問題は、それ自体はもちろん問題ではあります。でも、すごく重大な問題かというと疑問ではあります。もっと議論すべき重大な問題はたくさんあるだろうと言えば、それはまあ間違ってない。一方で、より重大な問題がある場合に小さな問題は話題にしてはいけないかというとそんなこともない。小さな問題もそれはそれで大事だし議論すべきです。理想的には軽重に関係なく全ての問題は議論するといいとは思います。実際には議論するべき課題は多く、議論する人のリソースが足りないから、全ての課題を議論は出来ないですけれどね。
闇営業と不適切契約問題は、もしも炎上してなかったら闇に葬られていたでしょうね。宮迫氏は今でもテレビに出続けていたでしょうし、吉本興業は契約形態を変えることもなかった。でも実際には炎上したので、宮迫氏はテレビに出なくなったし、吉本興業は契約形態を変えることになった。宮迫氏については彼に罰を与えるのが最大の目的ではなく、芸人に対して反社とのつきあいはよくないというコンセンサスを与えることが最大の目的でしょう。そんなことはこれまでにも何度も言われてきたことですが、実際にはみんなこれくらいなら大丈夫だろうと甘い線を引いてきたところを、今回の炎上でだいぶ正すことが出来たのではないでしょうか。
今回の事件を私はわりと小さな事件だと思っていました。そう思ってた人はそれなりにいたんではないかと思います。つまり、芸能人のスキャンダルの一つに過ぎないと。芸能人が反社とつきあいがあるのなんて昔からある当たり前の話じゃないかと斜に構えていたとかね。でもそうは考えずにせっせと炎上させた人がそれなりに居た。結果的に芸能界の問題がいくつか改善の方向に向かった。これは炎上による圧力があったからですよね。だから、炎上することはいいことをもたらすこともあるのかなぁというように思った次第です。もちろん常に炎上がいいこととも限りません。だいたい、大抵の炎上では情報が錯綜し不正確な情報をもとに炎上することも多く、結果的に間違った方向に誘導する場合も多々あるわけですからね。
(2019/9/11追記)
結局ですね、よくも悪くも世の中を動かすのは世論なんだと思うんですよ。独裁者ではなく。独裁者も結局は世論の支持がなければ力を失うわけですから。世論が良い方向に向かえば社会はよくなるし、悪い方向に向かえば社会も悪くなる。最悪は「我が代表堂々と退場す」などともてはやした結果戦争に突入するとかですね。
ただ、だからと言ってすべての責任が世論にあるわけでもない。世論を動かすための情報はマスコミなどを通してしか流通しないので、世論もある程度はコントロール出来てしまう。今の時代はネットがあるからマスコミだけが全てではないけれど、だからといって市井の個人がネットに一言書いただけで世論を動かせるわけでもない。ネットとはいえ、世論を動かすほどにするにはプロモーションなりが必要で、そこで広告代理店みたいな組織が影響力を誇示したりする状況は変わってないんですけどね。