この記事は単なる一例でして、近年チケットに関するニュースが何かと話題になっているように感じます。
チケット関連のニュースとしては大きく分けると次のような感じでしょうか。
- チケットが人気沸騰して入手が困難
- 入手困難なチケットがプレミア化してネットオークション等で高値で売買
- チケット転売対策として運営側がネットオークションを監視したり当日の本人確認を強化
冒頭のニュースは「チケットが人気沸騰して入手が困難」の例ですね。
このチケット狂想曲の原因としては、大きく次の要素があるかなと思っています。
- モノ消費からコト消費への移行
- ITの発達
「モノ消費からコト消費への移行」はまあ、実際はどうかはわかりませんがそう言われてますよね。物質的には豊かになったので、次に体験型の消費を求めるようになったと。従来CDを買って満足していた層がライブに出かけるようになったということですね。その背景には「インスタ映え」のようなSNSの流行もあるのかもしれません。提供側としてもCDが売れなくなったので体験型のサービスに移行しているというのもあるのでしょう。極端な例としては握手券だったりとか。
もう一つはITの発達で、これは更に二つの要因にわけられると思います。一つはITでチケットに関する情報が十分に流通するようになり、従来一部のマニアにとどまっていたチケット情報が広く行き渡るようになった。チケット情報としては、チケットの存在そのものもですが、チケット入手の為のノウハウもですね。優先予約のためにファンクラブに入るとかは従来は一部の濃いファンしか知らなかったことですが、今やライト層も含めた誰でもが知っています。チケット購入者同士の情報格差が縮まり、争奪戦が情報戦ではなく体力勝負と化してしまっている。
ITの発達のもう一つの側面は、ダフ屋がITを効率的に活用していることです。現状のチケット狂想曲は、ダフ屋がITを活用しているのに対して、運営側がまだ十分に対策できてないから起こっているのではないかと考えています。
ダフ屋といえば昭和の頃はライブ会場の入り口近くで「チケット買うよーチケット買うよー」「チケットあるよーチケットあるよー」と声をあげているものでした。違法行為でして警察の地道な摘発により、現在ではほとんど見られなくなりました。もちろん警察の努力によるものも大きいのですが、反面ネットで十分にダフ屋行為が出来るようになった為にライブ会場でちまちまとしたダフ屋行為をしなくなったという面もあるように思います。
ITによりダフ屋は圧倒的に便利になりました。ITのメリットの一つであるチケット情報の流通はダフ屋にももちろん恩恵を与えます。単純なチケット売買情報だけではなく、SNSでの言及などによりどのチケットが高騰しそうかといった予測まで行っていると思われます。チケットの入手のために実際に行列しないといけない場合、従来なら伝手を頼ってバイトを集めなければなりませんでしたが、今ならその手のアウトソーシングサイトを活用すればあっという間に集めることができます。
そして入手したチケットの売却も楽になりました。これもネットで行えます。代表的なのはネットオークションですが、おそらく地下に潜ったチケット売買サイトというのは数限りなくあることでしょう。そうした地下サイトにどうやって購入客を導くかという問題も、これもネットの力で解決できますし。そして決済もオンライン振り込みだけではなく、多種多様な決済手段が今では存在します。極端な話として、今やダフ屋はPCの前に座ってるだけでできるようになったということですね。しかも、従来の何倍何十倍もの効率で。
さて、そうして高度にIT化したダフ屋に対して、イベント主催側の対応が追いついていないのが問題の一端ではないかと書きました。もちろんイベント主催側とて無策ではなく様々な手を打っているとは思いますが、まだまだ後手に回っている面は否めないように感じます。また、イベント主催の大手は対策がある程度進んでいても、この手のイベンターというのは中小零細も入り乱れていますし、新規参入も数多いです。今時はそれほどでもないかもしれませんが、バブルの頃などは大学のイベントサークルがそのまま企業家した例もいくつもありますし。そうした中小零細イベンターにとってはイベントを開催することで精一杯でダフ屋対策までまだ十分に手が回ってないところも多いのではないかと思います。この辺りについては、ダフ屋対策を専門にするサービスがあってイベンターが利用できるようになってるといいですね。多分実際にそういうところもあるでしょうけれども。
将来的にはイベント主催側の対策が進むことによって、ダフ屋の排除が進めば、このイベント狂想曲も多少は沈静化するとは思います。ただ、完全になくなることは原理上あり得ない。というのは、この手のイベントというのは需要があるからといって無制限に供給を増やせないから。どうしても受給ミスマッチが解消できなくて部分的にチケット狂想曲は残るでしょう。モノ消費ならば需要があればそれだけ供給を増やせば対応できます。CDがヒットすれば増産すればいいのです。プレス工場の都合があるので無制限には増産できませんが、どうせ市場だって有限ですのでいつかは行き渡り、受給ミスマッチも解消します。デジタルデータの場合は事実上無限に提供できますので、サーバが負荷に耐えさえすれば大丈夫です。
しかし、イベントの場合はそうはいきません。チケット販売が好調だからと開催数を増やすにしても、アーティストなりは同じ人間ですので開催数は無限には増やせません。ではハコを大きくしようかと言っても、ある程度以上大きなハコは何年も先までスケジュールが詰まっていて臨機応変に借り出すなどということはできません。また、ハコが現時点で東京ドームだったりしたら、それ以上大きなハコなどそもそも存在しなかったりします。なので嵐のコンサートのチケットはこれから先も入手困難な状態が続くのでしょうね。これは解決策はどうにも思いつきませんね。人気コンテンツが多様化して分散するといいのですが、そう都合よくはいきませんよねぇ。