2015年にIT業界の人手不足という記事を書きました。これを書いた時点ではITエンジニアの人手不足は一時的な需給ミスマッチかなと思っていたのですが、その後も人手不足が解消される見込みはありません。それどころか、少子高齢化を背景に他の職種にも人手不足が広がっているとニュースなどでは報じられていますね。
こっからは例によって自分の狭い範囲の経験談からの推測のお話です。大した裏付けはありませんので、話半分というか世間知らずが憶測で語ってるわと笑いながら読んでいただければと思います。
さて、人手不足です。他の業種にしてもそうですが、ITエンジニア自体も人手不足です。従来ならリクナビとかに募集広告を掲載すればいくらでも応募があったのに、今はそれほどでもないようです。応募自体はあるのかもしれませんが、未経験者だったりとかで求める人物像とはマッチしていないことも多そうです。実際、いくつかの現場を渡り歩いた中で、求める人材をなかなか採れないという話は何度も聞きました。
人材がなかなか採れないなら、採用費を挙げればいい。単純な話として給与を上げればいいわけですね。リクナビに払う広告費も増やせば露出が増えて応募も増えます。そうやって採用にどんどんお金を掛けましょう、というのがバブル期の就活狂想曲でした。近年でも、ソシャゲブームの頃に札束で頬を叩くような求人が乱舞してたことがありましたね。儲かっていていくらでもお金が出せる企業はそうやってお金を出せばいいわけです。需給がミスマッチしてるわけですから、給与に反映するのは、正常な市場の機能の結果でもあります。
しかし、全ての企業がそうやって人材登用にお金を掛けられるわけでもありません。儲かってない企業は問題外としても、ある程度利益を上げている企業だって青天井に採用費を払えるものでもありません。札束競争になったら、どうやったって勝てる企業は少数に絞られてしまうわけで、それ以外の企業は全負けになってしまうでしょう。
というところから、どうやら企業側のマインドが変化してきているように感じます。具体的には、まず企業の経営姿勢として人数を増やして企業を成長させようというマインドの消失。人数を増やそうとしたら無限の採用費を払わないといけなくなるので、それではとても割に合わないと言うことに気がつき始めたようです。人数は増やさず少数精鋭で、業務内容も労働集約型から脱却しようとしています。ま、労働集約からの脱却はもう最近何十年も言われ続けてきたことなんですが、大半の企業はまだまだ昭和マインドが残っていて本気では取り組んでこれてなかったのではないでしょうか。しかし、本当に採用が難しい時勢になって企業も本気でこれらのことに取り組むようになってきたように感じます。
結果として採用活動の中で何が起こっているかというと、「そもそも採用自体を積極的に行わない。いい人材とたまたま巡り会ったら採用するという姿勢」と「その分、採用には時間をかける。これまでの様に書類審査と数度の面接で即採用ではなく、数ヶ月に渡って繰り返し接触し、人材の中身の判定と、企業文化へのフィットを確認する」といった感じでしょうか。代表的な例ではソニックガーデンさんの採用活動がそんな感じですね。まだまだそういう企業は全体の中では少数ですが、確実に増えてきてるように感じます。今後も数十年は日本社会では少子高齢化が続きますから、人材不足の傾向は変わりません。一部の超有名企業はブランド力で昭和型のような採用を続けられるかもしれませんが、それ以外の企業はいずれ採用の仕方を新しいスタイルに変更せざるを得ないのではないでしょうか。
人材側としては売り手市場でしばらくは就職先を選び放題の状況が続きますが、いずれ多くの企業が採用スタイルを上記のように変更したら、そう簡単には就職できなくなりそうです。もっとも、こういう採用スタイルに変更できるのは知識集約型の職業で、労働集約型の職業はどうやたって人手が必要なのでしばらくは採用スタイルは変わらないでしょう。接客とかそういう職種ですね。でもこれらの職種でも、人手不足がいよいよ切迫してくるとロボットに置き換わるケースが増えて、やはり就職が難しくなりそうです。
まだまだ企業側も労働者側も昭和の価値観でものを考えてしまいがちですが、社会状況は変革を迫っていますし、一部の企業や人は既に考え方を切り替えています。その変化には追いついていないと、どこかで職にあぶれて行き倒れ留ことになるのかもしれません。