とある飯屋でメシ食ってたときの話です。他の食べ終わった客のテーブルを片づけた店員の方がテーブルを台拭きで拭く前にアルコールスプレーをしゅしゅっとやったのを見てあっけにとられてしまいました。
よくよく考えてみると、問題がある行為ではありません。台拭きは雑菌の巣窟という話もありますから、アルコール消毒するのはむしろ清潔でしょう。スプレーですから飛沫が飛び散る可能性はありますが、おそらく間違って経口摂取しても問題ない製品を使っていると思います。(アルコール自体は人体に無害でも、薬液の添加物によっては適さないものもあるかもしれないという意味です)
食べ物を扱う現場でアルコール消毒自体はむしろ当然です。閉店して後片付けをしたあと、厨房器具をアルコール消毒というのはどこのお店でも当然にしているでしょう。してなかったら怖いです。
ということで問題はないのです。ないのですが、でもやっぱりなんかもにょっとしてしまったのは、多分その行為を見慣れてないからなんだと思うんですね。少なくとも私は今まで見たことはなかった。もちろん私の経験が世間のすべてというつもりはありませんから、私が知らないだけで世間では一般的に行われているのかもしれません。意識高い系()のお店とかなら、とっくに取り入れているかもしれませんね。私はそういうお店には寄りつかないので知らなかったと言うだけで。
でも。でもですね。やっぱりテーブルにアルコールスプレーを吹きかけるのは一般的ではないと思うんですよ。そんなことない?私が世間知らずなだけ?うーん、その可能性はもちろんあるんだけど。
見慣れないというのともう一つ。多分だけど、スプレーを噴射するという行為から殺虫剤噴射を連想するってのもあるのかなとも思った。ならば、実際はともかく見た目として衛生的な感じは受けないだろうと思う。でもこれはこじつけかもね。ヘアスプレーを初めとして、殺虫剤以外のスプレーも世の中にはたくさんあるんだし。
であれば「見慣れてない」というのが一番の要因かなぁと思うので、見慣れるようになれば気にすることもなくなるのかなとも思います。もしかしたら数年後には、こんなことはどこのお店でもやっている当たり前のことになっているのかもしれません。でも、2015年12月の時点では、まだそうは思ってないという人が少なくともここに一人は居ますよということを、後世になって「アルコールスプレーでテーブルを拭くのはいつ頃から普及したのだろうか」と調べる人のために書き記しておきたいと思います。って、そんなん調べる人居ない?
(2017/3/28追記)
この記事が時々検索されるようなので、ちょっと気になってアルコールスプレーでのテーブル拭きについて少し調べてみました。といっても検索して上位に出てくるアフィリエイト記事をいくつか見た程度なんで、リンクとかは特に張らないです。ほんとならちゃんとした学術論文とか、せめて消費者生活センターとかの調査レポートを張った方がいいんでしょうが、そこまで調べてません。ちなみに私はせいぜい高校生物くらいまでの知識しか持ってません。以下の情報は基本的には間違ってないとは思うのですが、学術的な裏付けとかはありませんので、その点さっぴいてお読みいただければ。
まずいくつかの記事で指摘されている通り、塗れた台拭きは雑菌の巣窟というのは間違いないでしょう。細菌が繁殖する条件として、湿度・温度・栄養が揃っていることがありますが、使用後の台拭きは見事にこの条件を満たしています。使用後数時間も経てば、雑菌まみれです。この状態の台拭きを口に入れれば、まず間違いなくお腹を下すことでしょう。
では、その台拭きでテーブルを拭くのが問題か、というとそれは別の話かと思います。雑菌まみれの台拭きでテーブルを拭けば確かにテーブルに雑菌は移るでしょうが、それが実数としてどれくらいの数であるかというのは実際に調べてみないとわかりません。無菌室ではないですから、台拭きで拭く前のテーブルにもそれなりの数の雑菌がありますし、拭き終わった後のテーブルは先ほどの細菌繁殖条件を満たしていませんので、その後に雑菌まみれになるということもありません。
また、テーブルが雑菌で汚染されたとして、それがどれくらい問題になるでしょうか。世界は広いのでそういう食習慣の国や地域もあるでしょうが、現代日本の飲食店では食器を使わずにテーブルに直に食事を置くことはないでしょう。箸やスプーンなどすらテーブルに直には置かないでしょう。つまり、テーブルが雑菌で汚染されていたとしても、それを直接口に持って行くわけではありませんので、それほど大きな問題ではないということです。気にするなら、食器や食材に付着している雑菌を先に心配した方がいいでしょう。当然ですが、こちらも無菌ではありませんので。
そもそもテーブルを拭く目的は何かというと、消毒のためではなくて汚れを拭き取るためではないでしょうか。食卓ですから、食べこぼしなどが落ちているということですよね。それを除去するのが第一の目的ですから、雑菌が残っていたとしてもそれほど問題ではありません。そりゃ雑菌も無いか少ない方がいいでしょうけどね。
いくつかの記事で指摘されていた通り、アルコールの殺菌力は適したアルコール濃度が決まってますので、濡れた台拭きにアルコールをスプレーしても濃度が下がってしまって殺菌力が落ちます。それはその通りなのですが、ではアルコール濃度が適切であれば必ず殺菌できるかというとそうとも限りません。雑菌だって生物ですので、アルコールの攻撃に対してもそれなりに耐えます。ちょっとスプレーした程度のアルコールの量で、ささっと拭く程度の時間で、全ての雑菌が完全に殺菌されるということは、まあ多分ないでしょう。実際にはこれも実験してみないとわかりませんけどね。完全に殺菌するには、それなりに大量のアルコールでそれなりの長時間さらさないと無理じゃないでしょうかね。それでもまあ、濡れた台拭きで拭くよりは乾いた台拭きとか使い捨てのペーパータオルとかにアルコールをスプレーして使う方が殺菌効果が高いのは事実でしょうけれど。
結局どういうことかというと、雑菌まみれの台拭きや濡れた台拭きにアルコールをスプレーしてる人に対してプゲラするのは別にいいんですが、ペーパータオルにスプレーしてるから俺は大丈夫だぜって言っても、それ実際のところどれくらい意味があるかわかって言ってますかってことなんです。まあ、意識高い()人たちというのは定量的科学的な現実よりも自分の信じるファンタジーが大事な人たちなので、当人たちが満足してればそれでいいんでしょうけれどね。
(2022/2/10追記)
この記事を最初に書いたのが2015年12月ということで約6年前ですね。この時は私は飲食店でアルコールスプレーを使ってテーブルを拭くことに強い違和感を感じました。しかしたった6年で世の中は変わります。コロナ禍という大きな理由があるからですが、今やアルコールスプレーで消毒していない方が違和感があるようになりました。
本題からはずれるんですが、つくづく怖いなと思うのは常識と思っているものの危うさ。よく「そんなの当たり前だろ、常識で考えろ」って思ったり言ったりしてしまいますが、その当たり前と思っている常識のなんと危うい事か。たった数年でころっとひっくり返ってしまう。このことは常に心に深く刻み込んでおかないといけませんね。