HDDはオワコン?

2012/3/18作成

HGSTの3.5インチHDD生産設備、東芝が取得へとかを読んでいて「なんかHDDの先行きってあんまり明るくないのかなぁ」とか思っていたところに、

すでにFacebookやiCloudではFusion I/OなどのエンタプライズSSD をペタバイト級で用いています。Tsubame2も200テラバイトSSDがあり順次増設、Tsubame3ではビットコストが十分下がりマルチペタバイトの予定です。@kentakeuchi2003

— Satoshi Matsuoka (@ProfMatsuoka) 2012年3月18日

というのを教えてもらってちょっとショックを受けてたりする今日この頃です。SSDでペタバイトクラスですってー!?

意味のある比較になるか分からないけど、ともあれ庶民として分かる範囲のデータということでAKIBA PC Hotline!HDD/SSD最安値情報【 調査日:2012年3月15日 】でちょっと計算してみよう。

まずHDD。ビット単価が一番安いのは「WesternDigitalのWD Green 3.5inch 5400rpm 2.5TB 64MB SATA3.0 WD25EZRX(2.5TB,64MB)」。1台¥10,980。ペタバイトということで400台購入したら¥4,392,000。あれ、意外と安いな。もっとべらぼうな金額になるかと思ったのに。

次にSSD。ビット単価が一番安いのは「その他6Gbps対応SSD (120〜128GB,MLC)」。1台¥9,980。これを8000台購入したら¥79,840,000。おや、これも意外と安いな。8千万払ってTsubameのパフォーマンスが何割かでもアップするんだったら、十分ペイできると言えるんじゃないだろうか。実際には大量導入でディスカウントもあるだろうし。

冒頭のスラドのストーリーには「ビッグデータがあるからHDDの優位は揺るがない」というコメントもあったんだけど、確かに価格差はあるもののこのくらいの値ごろ感だったらSSDに乗り換えられてもおかしくないんじゃないかな。少なくともハイエンド系の用途では。HDDの優位を語るビッグデータだけど「HDDでは遅い」という致命的な問題があるわけだし。

ということで、どうやらHDDはオワコンのようですと勝手に結論付けてみたりして。まあ実際にどうなるかはわかんないんだけどねー。

(2012/3/21追記)

「SSDはHDDに比べると信頼性が劣る」という指摘をもらいました。確かにそれはそうですね。その点で考えると、まだまだHDDにも優位性があるでしょう。

でも、それからさらにつらつらと考えていたんですが、HDD/SSDの信頼性って、1台しか入っていないパソコンとかだと「壊れた」「壊れてない」の2値しかありません。運悪く「壊れた」にぶち当たるとデータは吹っ飛びますから大変困ります。困らないためにはこまめにバックアップをとらないといけなくて、それはそれで大変な手間です。

しかし、これがエンタープライズ用途だとどうでしょう。このような用途では冗長化しているのが普通ですから、ディスクの1台や2台が壊れたところでデータが吹っ飛ぶことはありません。壊れたら、そのドライブを交換すれば元通りです。この交換の手間と代替ドライブのコストがかかるのが問題という程度でしょう。ということは、エンタープライズ用途では信頼性はコストに還元できるわけです。

ディスクドライブのコスト指標としてビット単価というものがありますが、信頼性を加味するとビット時間単価とでもなりますでしょうか。1TBのデータ領域を1年間使用できる状態を維持するのにかかるコストが1万円とかそういう感じになると思うのです。

例えば、同じ容量のディスクドライブで、HDDは5年で故障して、SSDは1年で故障するとします。購入コストが同じなら、ビット時間単価はSSDはHDDの5倍ということになります。あとはこのコストが得られるパフォーマンスに見合うかどうかという単純な話になります。そして、FacebookやTSUBAMEではSSDの方がビット時間単価が安いという判断を下したということなのでしょう。

繰り返しますが、冗長化されていないパソコンなどでは信頼性はそれ自体が重要なファクターになります。しかし、RAIDなどで冗長化されたシステムにおいては、信頼性はコストに還元されていますので、コストが見合うかどうかだけで評価されます。今後SSDのビット時間単価がHDDに迫っていくにつれ、エンタープライズ用途ではHDDからSSDへの移行が進むのではないでしょうか。

(2021/1/24追記)

この記事を書いてから10年近くも過ぎましたか。今ではもうすっかりSSDに移行してしまいましたよね。最後の砦と思っていたデスクトップPC用途も含めてファーストチョイスはSSDになりました。SSDは信頼性が劣るという指摘を上ではしていますが、今ではそういえばそんなこともあったっけって気分です。プチフリとか、多分年寄りしか知りませんよね。

ではHDDが消え去ったかというとそうでもない。やはり大容量という意味では今でもHDDに分はあります。HDDでは今では18TBまでの製品が販売されています。もっともSSDも最大で8TBもの製品がありますから、容量という意味でも差は縮まってきてますね。

というところで、実際どれくらいSSDが安くなったのか気になったので、以前と同じようにAKIBA PC Hotline!の相場情報で比較してみたいと思います。

まずHDD。東芝製HDDが新パッケージ登場で大きく値下がり、相場全体では大容量品が下落傾向によると、ビット単価が一番安いのは「Seagate BarraCuda ST6000DM003(6TB)」。6TBの最安値が9,790円です。ペタバイトストレージを構築するために167台購入したら、1,634,930円。2012年は4,392,000円でしたから、10年ほどで3分の一近くまで値下がりしてますか。これくらいなら車を買うことを思えば個人でも買えなくはない値段と言えるでしょうか。

次にSSD。1TB SSDの税抜き7,980円をはじめ特価が続出、年末セールでSSD相場は値動きが活発化によると、ビット単価最安は「Western Digital WD Blue 3D NAND WDS500G2B0A(500GB)」。500GBが最安値で6,080円。ペタバイトストレージ構築のために2000台購入すると12,160,000円。かつての79,840,000円からは6分の一以下まで値下がりしてますが、それでもまだHDDよりは高くつきますね。中古住宅並みの価格ですから、個人ではちょっと手が出そうにありません。

もしかしたらHDDとSSDでビット単価逆転も起きてるのじゃないかと期待したのですが、まだその時代にはなってなかったようです。また数年後に同じような比較をしてみようと思います。その頃までHDDが生き残っていたらですけれどね(^^)。

あ、ところでですが追記的な内容を別記事にして投稿していました。HDDが無くなっても困らないです。続きの話なので、こちらからもリンクしておきます。