わたしはあまり写真を撮るのが好きではありませんでした。実際、ツーリングを始めた頃からしばらくは、ツーリングで写真を撮ることはまったくありませんでした。
なんで写真を撮らないかというと、後で写真を観て懐かしむという趣味を持っていなかったからです。ツーリングをしている今が楽しければそれが一番いい。後で思い出す為の思い出を作るためにツーリングをしているんじゃない。写真が無くて思い出せなくなったら、それはそれでいいじゃないか。と、そんな風に考えていました。
もう一つ写真を撮らない理由がありました。それは、実際の風景と写真で観る風景があまりにも違うからです。わたしは雄大な大自然を眺めるのが好きですが、実際にそういう風景の場所に立つと、圧倒されるばかりの感動を覚えます。その感動は、360度の視界から得られる情報にプラスして風、音、気温、空気などさまざまな情報が重なりあって出来ています。その感動は、たかだか35mmのレンズで切り取られた印画紙の中には写し取れるものではありません。
ここで一つ断っておくと、わたしは写真そのものを完全に否定するわけではありません。写真は写真で非常に重要なものであると思います。ただ、写真というのは風景なら風景を素材にして、フレームの中に切り取ることによって出来上がるもので、フレームの中が全てです。フレームの外にあるものまで含めたライブとは別物ですし、わたしが求めるのはライブの方です。
そんなこんなでツーリングにはカメラを持って行かなかったのですが、今ではツーリングにカメラを持っていきますし写真も撮ります。なんでかというと、それはこのサイトにツーリングレポートを載せる時に一緒に写真もあった方がいいかと思うからです。そしてもう一つの理由は、わたしが好き勝手に遊びまわるのを許してくれている妻のみかんに旅の話をする時に見せる為です。見せたい相手が居る場合、ライブと比べると何分の一かの情報しか無い写真でも、無いよりははるかにいいですからね。