個人向け国債

結構人気があるらしい個人向け国債。個人的には、以下の点から考えてあまり魅力的な投資先とは思っていません。

利子が単利である事。10年という長期商品ですから、単利と複利の差は大きなものになります。個人向け国債の利率が定期預金より高いといっても、一般に複利である定期預金とは単純に比較できません。

変動金利リスクがある事。現在はゼロ金利ですから、金利は上がるしかありません。だから、誰もが変動金利のメリットを説きます。しかし、10年という長期スパンで考えると、上がった金利が下がるという可能性も考えなければなりません。教科書的には金利が最高になった時点で解約して固定金利商品に乗り換えればいいのですが、誰もがそんなに正確にマーケットタイミングを取れるわけではありません。途中解約せずに10年持ち続けた場合は、平均的には低い利回りになってしまうでしょう。また、次に挙げる解約手数料の問題もあります。

途中換金には莫大な手数料が掛かる事。手数料は直近1年分の利子です。つまり、途中換金する場合は過去1年間は金利ゼロで運用するという事になります。金利が上昇して別商品に乗り換えたいという高金利状況では、1年間のゼロ金利は痛いペナルティです。また、実際には過去1年の受け取り利息には20%の所得税/地方税が引かれますので、1年以上ゼロ金利運用という事になります。このペナルティを避けるためには10年間保有し続けるしかなく、「中途換金可能」という個人向け国債の大きな特徴は絵に書いた餅という事になってしまいます。

手数料が掛かる事。銀行などで購入すると口座管理手数料などが掛かります。もっとも、郵便局や証券会社などで買えば大抵は手数料は無料ですので、あまり気にする事はありません。なお、郵便局や証券会社経由でも購入時に少額の費用がかかることがありますが、これは利子の過払い分の調整額ですので、手数料ではありません(結構勘違いしている人が多い)。

個人向け国債は、そのターゲットから考えて主な比較対象商品は定期預金になると思われますが、定期預金よりも良い金融商品とは現時点では思えません。都銀の定期預金ならば金利が低すぎて話しになりませんが、ネットバンクならば金利もそこそこあります。おそらくは、個人向け国債を買うよりも、ネットバンクの定期預金を買った方がトータルでは利便性が高いのではないかと思います。

と、散々悪口を言ってしまった後になんなのですが、半分シャレで1万円だけ買ってみました。まあ、何事も経験してみないと分からないという事で。