マンションの建替え/解体を容易にする法改正案

2023/11/14作成

老朽マンション建て替え、耐震性問題なら同意「4分の3」以上で可能に…再生推進へ緩和案

まだ区分所有法の改正案の段階ですが、建替え/解体決議の要件が緩和されるそうです。決議に必要な票数の緩和もですが、個人的には連絡が付かない区分所有者を決議の分母から排除できる条項が非常に重要かなと思います。

普段の総会でもそうですが、出席もしなければ委任状も出さないという区分所有者は結構います。総会の成立が毎回危ういマンションは日本全国あちこちにあるでしょう。そんな状況ですから、高い賛成率を要する建替え/解体の決議というのはこれまで難しく、実際に建替えられることも解体されることもほとんどなかったわけです。

普段の総会の決議事項もそうではあるんですが、マンションの建替え/解体は区分所有者全ての財産に対する大きな変更ですから、容易に行えないように高いハードルを設置するのは理にかなってます。理にかなってるんですが、現実的には実現不可能な制限になってしまっている。

「マンション管理なんてめんどくさい」といって出席しない区分所有者ももちろん問題なんですが、特にスラムマンションにおいては区分所有者が行方不明ってことも多いんですよね。賃貸に出していれば区分所有者の現在の連絡先はなかなかわかりません。区分所有者が亡くなって相続が行われたけど、相続者は別に住居を持っているために現住してないってこともあります。このとき登記してもらってないと、管理組合からは誰が現在の区分所有者になるかわからない。区分所有者が痴ほう症になって意思決定が行えなくなったとか、施設に入居してしまってどこにいるかわからないなんてこともあります。

また、区分所有権は放棄できないので原則として常に誰かが所有していることになっているのですが、例外もあります。天涯孤独で相続者が居ない場合と、相続者が全員相続放棄した場合と、法人が解散してしまった場合です。この場合は実際に区分所有者が存在しないことになってしまいますね。

しかし現在の区分所有法はこのような連絡のつかない区分所有者の存在を仮定していませんので、全員が必ず決議に参加する前提で法律が作られてしまっているのが最大の問題点ということになります。そして、その前提が改正される見込みになると。これで一気に建替え/解体が進むとはいかないとは思いますが、従来よりははるかに容易になるのは間違いないでしょう。例えば滋賀県野洲市の美和コーポの場合、9人中7人が建替えに賛成したものの、反対が1人、行方不明が1人で決議出来なくて問題が長期化したんですよね。美和コーポの場合は、今回の法改正案で救済できた例になったものと思われます。建替え/解体で来ても問題は他にも残るんですが、とりあえず今目の前にある廃墟マンションをなんとかすることは出来るようになるかなと。