ご多分に漏れず、我が家でも住宅ローンの借り換えについていろろと検討していました。結論としては、現状我が家では借り替えはしてもメリットは少ないと判断したので、そのままにしています。それよりは繰り上げ返済をしていった方がよほどメリットがありそうです。ただ、借り換えはしていないものの、いろいろ調べた中で気になったポイントがいくつかありましたので、ここに書き出してみます。
住宅ローン借り換えの目的
何でもそうなんですが、モノを買ったりするには目的があるはずです。住宅ローンの借り換えの場合は、返済総額の軽減が目的という場合が多いと思います。もちろん、月々の返済額を抑えるとか、変動のリスクを回避するとかという場合もあるでしょう。いずれにしても、そも目的を達成する為にスタートするはずなんですが、キャンペーンだの特典だのいろんな付加条件がついてくると、ついそっちの細かいところに気がいってしまいがちです。ややこしくなってきたら、まずはこの最初の目的に立ち返って考えてみるべきでしょう。そして、返済プランが出来上がったら、最初の目的をちゃんと達成出来ているかのチェックが必要です。
借り換えの限界
これはうっかりしがちだと思うのですが、どんなにいい条件の借り換えをしたところで、元本は減りません。軽減できるのは手数料と支払い利息だけです。3000万円のローンを組んで、借り換えによって支払い総額が2500万円になるなんて事はありません。いくら借り換えがお得だと言っても、限度があるわけです。
例えば、3000万円を35年元利金等返済でローンを組んだとします。35年間の総返済額は金利によって次の通りになります。
金利 | 月支払額 | 総支払額 | 総支払い利息 |
---|---|---|---|
1% | ¥84,685 | ¥35,567,700 | ¥5,567,700 |
2% | ¥99,378 | ¥41,738,760 | ¥11,738,760 |
3% | ¥115,455 | ¥48,491,100 | ¥18,491,100 |
4% | ¥132,832 | ¥55,789,440 | ¥25,789,440 |
5% | ¥151,406 | ¥63,590,520 | ¥33,590,520 |
6% | ¥171,056 | ¥71,843,520 | ¥41,843,520 |
7% | ¥191,656 | ¥80,495,520 | ¥50,495,520 |
8% | ¥213,078 | ¥89,492,760 | ¥59,492,760 |
9% | ¥235,197 | ¥98,782,740 | ¥68,782,740 |
10% | ¥257,901 | ¥108,318,420 | ¥78,318,420 |
例えば、現在年利4%で住宅ローンを組んでいたとして、借り換えて節約できるのは最大でも2500万円というわけです。
借り換えの目安
よく「金利差1%以上、残債1千万円以上、残期間20年以上が借り換えの目安」なんて言いますよね。まあ、きっかけの目安としてはいいんでしょうが、この条件をあまり厳密に考える必要はないと思います。どこの銀行でも窓口で借り替えシミュレーションをしてくれますので、どれくらい得になるかなんてすぐに分かります。ネット上でその場で計算できるところもありますし。また、その結果が大した差額でなかったとしても、家計状態によっては大きな意味を持つ場合もあるでしょう。変に目安にとらわれることなく、とにかく試算して比較してみるべきだと思います。
長期固定か変動か
借り換えに限らず、住宅ローンではよく比較される問題です。なお、短期固定は実質的に変動金利と同じ事ですので、変動に含めて考えます。雑誌などでは「今後、金利が上がると思うなら長期固定、下がると思うなら変動で」なんてアドバイスしてますけど、これはナンセンスだと思います。今後の金利動向なんて誰にもわからない事を、素人に予想させて判断させるなんて無茶もいいところです。
長期固定か変動かというのは、リスクを取るかどうかという事だと思います。「借り換えの限界」で金利による返済総額を比較しました。変動金利の場合も、トータルでの平均金利がいくらになるかと考えればあの表が適用出来ます。現在4%固定で3000万円借りていたとして、変動金利に借り換えると最大で約2000万円のメリットから最悪で約5200万円のリスクを負うという事になります。なお、ここでは最悪の場合で10%の金利までしか計算していません。実際には10%どころか6%でもまずあり得ない事だとは思うのですが、何といっても先のことは分かりません。ここで注意すべきはもちろんリスクの方で、そのリスクに耐えることが出来ないのなら、多少の損は覚悟の上で固定金利にすべきでしょう。結果的に35年間金利が低いままで推移したとしても、その場合の余分な支払利息はリスクを回避した保険料だったわけです。
借り換えでは一般には無理ですが、新規借り入れの場合は長期固定と変動金利を組み合わせる事も出来ます。固定と変動の比率によってリスクの幅を調整することができます。例えば、半額を固定で残りを変動にした場合、最大1000万円のメリットから最悪2600万円のリスクになるわけです。全額固定の場合のリスクは負えないけど、多少ならならなんとかという場合にはこんな方法もありでしょう。
諸手数料
借り換えに伴う諸手数料が安かったり無料だったりなんてのはよくある話です。何でも高いよりは安いほうがいいのは当たり前ですが、一方でタダより高いものは無いなんて事も言います。銀行が商売で住宅ローンを貸し出している限り、意味無く手数料が無料になったりするわけがありません。客寄せのためのキャンペーンという事もありますが、実は金利がちょっと高いなど別のところで払うだけかもしれません。もちろん、コストダウンの結果手数料が安くなっている場合もあるでしょうが。無料だからイイ、ではなくて総支払額で比較して安くなっているかどうかで判断すべきでしょう。
繰上げ返済手数料
一部の銀行では繰上げ返済手数料が無料だったりします。高いよりは安いほうがいいんですが、果たして繰り上げ返済の手数料は無料で意味があるんでしょうか。
繰上げ返済は実際にはそれほど多くする機会のある事ではありません。せいぜい2,3年に一度。全返済期間を通して10回もすれば多いほうというのが一般的ではないかと思います。だとすると、1回あたりの手数料が1万円だったとしても、トータルで10万円程度しか掛からない事になります。安い金額ではありませんが、支払い総額がどれだけ安くなるかの方が大事です。
繰り上げ返済手数料が無料でなおかつ返済額に制限が無い場合、毎月数万円程度でも繰り上げ返済する事も可能ですし、普通預金の余剰金を自動的に繰上げ返済に回してくれるサービスをしている銀行もあります。このように毎月繰り上げ返済をするならば、繰り上げ返済手数料が無料であるのも意味がありそうですが、果たしてそうでしょうか。
例えば、年利3%で借りていて毎月10万円ずつ繰り上げ返済した場合と年末に120万円繰り上げ返済した場合との支払い利息の差は(¥100,000×0.03÷12)×(11+10+9+8+7+6+5+4+3+2+1)=¥16,500です。微妙なところですね。これまた、他の条件も含めて総支払額がどうなるかによって簡単にひっくり返りそうです。
キャンペーン金利
最近はどの金融機関も住宅ローンに力を入れていますから、金利優遇キャンペーンも盛んに行われています。3年固定で1%なんてのも珍しくありません。そこで注意しないといけないのは、キャンペーン終了後の適用金利です。通常の金利が3年固定2.5%で、キャンペーンの優遇で1.5%引いて1%だったとして、3年後以降も引き続き1.5%の優遇を受けられるのならいいのですが、通常金利が適用されるようでしたら結果的に高くつく可能性もあります。
繰上げ返済との比較
借り換えを検討する場合、繰上げ返済とも比較してみるべきでしょう。手数料50万円払って借り換えをする場合と、その50万円を繰り上げ返済に回す場合と(繰上げ返済は一定額以上という場合は無理ですが)。一般に言って、繰上げ返済では元本そのものが減りますので、総支払額の削減効果は非常に高いです。固定金利から変動金利に借り換える事によるリスク増大もありません。
ところで借り換えは必要なのか
借り換えというか、繰り上げ返済も含めて支払い総額を減らす行為そのものですね。「そんなの当たり前じゃないか」と言われるかもしれませんが、そうでない場合もあります。それも仮定の話ではなくて、つい最近の日本でも。それは高度経済成長からバブルまでの期間です。この間では、支払い利息をはるかに上回る勢いで不動産の価値が上がっていましたから、借金して不動産を買い数年で売り抜けるなんて事が当たり前に行われていました。まあ、今後の日本でそのような土地急騰が起こるかというと疑問ですけど、経済急成長中の海外の土地投資を行う場合などには十分に当てはまります。最初に借り換えの目的で書きましたが、トータルでみて得になるかどうかが大事なんだと思います。手段として借り換えがあるわけで、借り換えは目的ではありません。