2位じゃダメなんです

2024/7/24作成

事業を行う際、1位になれる市場を見つけなさいと言われます。1位になれる市場があれば、集客せずに自動的にお客さんが来てくれます。なんなら価格決定権を握ることも出来ます。これらが実現すれば経営は非常に楽になりますよね。だから1位の市場を見つけなさいと。

言ってることは理解できるのですが、個人的にはこの考え方に非常に違和感を持っていたんですよ。なぜなら市場には1位ではない事業者だってたくさんいるから。1位を目指すといいですよというのはわかりますが、2位以下で存続している事業者も多数存在します。そうした事業者だって十分に利益をあげているわけですよね。であれば無理して1位狙いではなく、2位以下を狙うのも戦略としてありなのではないかと思うわけです。

この問題を最近考え直して、やっぱり1位でないとダメなのかなというように思い直したので、その考えをこうして記事にまとめてみます。

なぜ1位でないといけないかというと、事業における取引とは事業者と顧客の2者の間で成り立つわけですよね。そこで顧客が、この事業者から購入しようと決断してお金を支払うのが取引です。難しいように書きましたが、近所の八百屋で大根を100円で買うのもこれと全く同じことですね。

顧客は当然いろいろな条件を比較して事業者とその事業者の提供する商品を検討するわけですが、最終的に購入を決断する際には、その顧客にとって事業者もしくは商品は1位になってないといけないわけですね。他にもっと良い商品があるとわかっているのに、あえて悪いとわかっている商品を買う人なんているわけがないんですから。なので、事業者は1位でなければならないのかなと。

ラーメン屋で考えてみましょうか。何年も修行して腕を磨き、研究に研究を重ねて究極のスープを作り上げてラーメン屋を開業。思った通りにお客さんに評判になり、ラーメン雑誌にも掲載され行列店になりました。というようなのが起業指南における1位の理想像かと思います。確かにこういう起業が出来れば理想的ですね。ただ、世の中には2位以下のラーメン屋もたくさんある。オリジナルではなく業務用のスープを使っているようなラーメン屋がなぜ存続できているのか。そこをどう解釈すればいいのか。

先ほどの例では味の点で1位でしたが、1位になる軸は味に限らないというのがその回答かなと思います。例えば量。ボリューム満点のラーメンを出せば、男子大学生などには人気になるでしょう。価格で勝負というのもありますね。他より安ければ、味を気にしないお客さんは一定数流れてくるでしょう。営業時間が他のお店より長ければ、時間帯を区切ってみればその界隈で唯一営業してるラーメン屋さんになれて1位ということになります。

近くにあったから選ばれるというのもありますよね。遠くまで行けばおいしいラーメン屋があるとわかっていても、行くのがめんどくさいからこの店にしておくかという判断。この場合、近さで1位になっているわけですね。お店の側から考えると商圏人口であったり、通行量であったりというのがこの指標での1位になれるお客さんの人数になるわけです。それを一言で立地というわけですね。

他に良いものがあるのにそこまで行くのがめんどくさいというのも顧客の購入判断に結び付くわけですが、さらに言えば他に良いものがあることを知らないというのもあります。1位であるというのは客観的な指標として1位であることではなく、顧客の知りえる範囲、購入できる範囲という意味ですから。ラーメンマニアでああればどこにどんなラーメン屋があるか熟知しているでしょうが、そうでない一般の人にとってはたまたま看板を見かけたそのお店が選択肢の全てになったりするわけです。つまり、宣伝によってリーチすればマニア層以外に対しては1位をとることが可能という意味ですね。

さらに考えると、究極のスープを提供するラーメン屋のキャパシティの問題もあります。頑張ってスープ作ってラーメンを茹でても、1日に提供できるラーメンの量には限りがあります。お客さんがそれより多ければ、当然に食べそこなうお客さんも出てくる。そうしたお客さんにとって、では他の店の中で一番いい店で食べようかという場合には、2位のお店が現在食べられるお店という選択肢のなかでは1位になれる。

こうしてみると、リアルの店舗でリアルの商品を提供する場合、立地と供給量という点で1位になるチャンスがあるということですね。2位以下のお店も存続できる理由の多くはこの立地と供給量ではないかと思います。ちなみにこれを裏返すとネットサービスなどではどちらも成り立たないんですよね。ネットは世界中に供給出来るので立地は関係ないし、デジタルデータは供給量に限りが無いので。そして私が起業したいなと思っているのもネットサービスなので、こりゃ困ったねと思っているところでもあるのですが。ちょっと話が逸れました。

ということで、2位じゃだめで1位を目指せというのは間違ってなかったかなというのが今のところの私の結論です。ただ、その1位というのは誰でもすぐに思いつくような指標ではない。ラーメン屋であれば味で1位というのが思いつくけれど、実は1位になれる指標というのは他にもあって、その指標で勝負すればよいのだろうということかなと思います。