「ネットカフェ難民」川崎 昌平

2010/9/25作成

帰る事の出来る家も、養ってくれる家族も居る川崎昌平さんが、単に1ヶ月ほどネットカフェで暮らしてみましたということをレポートしただけの本。

ネットカフェ難民というのは、ホームレスの一形態だと思う。従来のホームレスは路上で生活したり簡易宿泊所を寝床にしたりしていたわけだが、ここ最近になってネットカフェが安価な宿泊所代わりに使用できるとあって、ホームレスが進出したわけだ。

当たり前のことだが、ホームレスには家が無い。家族も無い。孤独だ。不安だ。そうした負の感情を抱えながら、しかしそれを直視するのは恐ろしすぎるから、押し殺して毎日を過ごすのがホームレスだ。しかし、川崎昌平さんにはそんな負の感情は一切無い。ただ単に、毎日をお気楽に過ごすだけだ。

ホームレスも年配になると、ある種の諦めがあるものと想像される。自分の人生はここまでだ。あとは野たれ死ぬまで生きるだけだという、そういった悟りにも似た境地にもなるのではないだろうか。一方、ネットカフェ難民のホームレスは一般に言って比較的若い。若いということは可能性があるということでもある。今はホームレスだが、もしかしたら何かの拍子に事態が逆転して、普通の生活が送れるようになるのかもしれないという希望。しかし、そのはなかい希望を持つことは、かえって絶望を深くすることにもなる。ネットカフェ難民とは、そんな絶望を抱えている人たちではないだろうか。しかし、川崎昌平さんからはそんな絶望も全く感じられない。

例えば、プチ家出してしばらくネットカフェで寝泊りしてみようかという人にとっては、本書は参考になるかもしれない。旅行に出かけて宿泊費を安くするためにネットカフェを利用するような人にも役に立つかもしれない。しかし、本書を読んでも、タイトルにある「ネットカフェ難民」については、何一つ分からない。