電気を通すプラスチックを発見してノーベル化学賞を受賞した白川英樹氏の講演/対談/原稿などをまとめた本。全部で5章からなるけど、原稿集という性格から1冊の本として系統だっているわけではなく、章によっては同じような話が繰り返し書かれている部分も多い。整理し直して伝記としてまとまっている方が読みやすいんだけど、新書なんだから別にこれでも読むのが大変というわけではない。
さて、私は一応理系なんだけど化学は実はさっぱり。特に有機化学はほとんど授業を聴いてなかったので知識としては無いに等しい。だもんで、本書でも導電性高分子の合成法や組成などの説明ははっきり言ってさっぱりわからん。情けないけど、しゃーないわな。
じゃ本書を読んで何も分からなかったかというと、まあそこまで絶望的でもない。試薬の量を間違えた偶然から発見に至った経緯や、ペンシルバニア大学に渡って研究した話、大学や研究室の様子などは読み物的に読んでもおもしろい。
ただ、なんと言ってもすごいなぁと思うのは、本書が出版された時点で白川氏は60をとおに過ぎているのに、まだこれから新しいテーマに取り組もうとしている姿勢。研究者ってのはある意味普通の人間とは違うもんだし、なかでもノーベル賞受賞者を常人と比べるのは間違ってるけど、それにしてもその意欲とバイタリティはすごいね。