介助犬?盲導犬なら知ってるけど、介助犬ってなんだろう。本書によると、手足の不自由な人の生活を助ける犬らしい。他に聴導犬という犬もいて、合わせて補助犬と呼ぶらしいけど、マイナーな盲導犬よりも更にマイナー。なんせ日本に盲導犬はそれでも1000頭近く居るらしいけど、介助犬は30頭程度。こりゃ知ってる方が珍しいのは仕方が無い。ということで、広報・啓蒙するために書かれたのが本書。読んだことによって私も一つ知識が身に付きました。
本書の内容は、介助犬の普段の様子、生後から訓練の様子を写真入で綴っている。小学生でも読めるようにと、字も大きく写真もふんだんにつかってあるので、絵本感覚であっという間に読める。でも、本書で扱っているテーマを考えると、内容は重い。
それにしてもすさまじいなと思うのは補助犬の育成過程。生後1年間をパピーウォーカーの家庭で過ごした後約1年間の訓練。その過程でも振り落とされる犬は当然居る。その後ユーザとのマッチングを経て晴れて補助犬になるわけだけど、相性が合わなかった場合はやり直し。場合によってはせっかく育成された補助犬は仕事をせずに家庭犬として過ごすこともあるとか。生き物同士の話だから仕方が無いとはいえ、ちょっとやりきれないような気がする。補助犬になれなかった犬や仕事を終えた犬は家庭犬になるそうだけど、その引き取り手ってのも十分ないといかんよな。うちは犬を飼う予定はないけど、もし飼いたいというような話になったら、こうした犬を引き取ることも考えてみたいと思った。
個人的に気になるのは補助犬の育成に掛かるコスト。育成自体に250万から300万円程度掛かるそうだけど、これは人間の介助者をつけることを考えれば格安のコストとも言える。人間の介助者と全く同等の介助が出来るわけではないけれど、24時間つきっきりで介助できるという意味では介助犬のメリットもあるわけだし。さてその育成コストを誰が負担しているかというのは本書にははっきり書かれてないんだけど、寄付と行政からの補助によって成り立っているんだろうか。そして、それ以上にボランティアの無償行為によって支えられているよなぁ、多分。ボランティアが悪いと言うわけではないけど、「リサイクル社会―浪費からの脱出」にあったようにボランティアに頼ったシステムは脆いという問題点があるのが気になる。人は善意だけでは生きていけないものだと私は思うから。