この本は2002年に刊行されてる。この頃と言えば、マクドナルドやユニクロと並んで吉野家がデフレの象徴としてもてはやされていた時期。古本で新書のたぐいを読んでいて面白いのは、未来人視点で読める事。例えばこの本では「アメリカ産牛肉は科学的に管理されているのでBSEの心配は無い」なんて事が書かれていて、かなりニヤニヤすることができる。ま、ちょっと性格悪い感じですけど。
この本は上記の吉野家が勝っていた時期に書かれた本だから、大体において吉野家讃歌ではある。私自身は吉野家は嫌いではなくそれなりに好きな方なので、まあ読んでて楽しかった。
面白かったトピックは2点。一つは通常の外食産業以上に吉野家では残飯に気をつけているという話。なぜなら、牛丼屋はほかの外食店と違い「お腹が空いてないのに入る事は無い」「基本的に一人で食べにくるので、牛丼が嫌いという事はない」という理由から、食べ残しは基本的にあり得ない。あるとしたら中身に問題が会ったときだけだという事かららしい。なるほど。確かに、吉野家で食べ残す事なんて普通はしないわな。
もう一つは、牛丼1杯250円セールをしたときにあまりの客数で店舗とバックヤード両方のオペレーションが完全に崩壊した後、あらゆる手順を見直してわずか3ヶ月後に通常価格を280円に設定する事に成功していること。客の立場からすれば単なる値下げだけど、吉野家側としては値下げによって増える客をさばくシステムを構築しなければならない。そのための体制の構築をわずか3ヶ月で終わらせたというのは驚嘆に値する。これを考えると、大きな会社は小回りが利かないなんて言われるのが嘘だというのがよくわかる。吉野家ほどの企業が短期間に大きな動きをすることが出来る。この例を考えると、逆に小さな企業の方が動きが鈍かったりするんじゃないだろうか。